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男ともだち

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関係のさめた恋人と同棲しながら、遊び人の医者と時々逢いびき。仕事は順調なのに、本当に描きたかったことを見失っている―京都在住イラストレーター神名葵29歳の熱くてダークな疾走する日常。


千早茜さんの本です。
 
29歳。
同棲中の彼氏がいて、浮気相手の医者とも上手くやっている。
自分がやりたいこと、イラストレーターとしてもそこそこの成果を出しているそれなりに充実した日々。
 
学生時代に「男ともだち」として出会ったハセオ。
そんなハセオとの再会から、上手くやれていると思った日々がぼろぼろとほつれはじめていく。
 
決して男女の関係にならない、けれど甘えてしまう、さらけ出してしまう「男ともだち」。
 
私も男女間の友情は成立しない、とずっと思っていたタイプなのですが・・・恋愛感情が決して生まれない男友達というものができ、それもあるのかなと思ったりもしました。
 
ただ、このハセオと主人公の関係は、普通の友情とは違っていて、何だろう。不思議な関係です。
 
下手したら家族や恋人以上の繋がりなのではないでしょうか。
 
前半は少々性にだらしないように思える主人公や、いやに物分かりが良いようで影が薄い同棲相手の恋人の存在なんかがちょっと不快でもありますが、仕事に対しての半端じゃない気持ちはちょっとうらやましくもなるほどで、中盤くらいから意外とすらすらと読めました。
 
また、くっつきそうでくっつかない、「男ともだち」のハセオと、自分の世界をちゃんと見つけることができた主人公との終章がとてもいいです。
 
すとん、と腑に落ちた感じ。
何だろう、本当千早さんだからこそ書ける物語だと思います。
 
普通の女性作家が書いたら、ただの恋愛小説(体の関係多め)に成り下がっていたと思いますよ。
そしてこの作品、直木賞候補作だったのですね。
(4点)