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雨のなまえ

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こんな日に降るこの雨の名前を知りたかった。

妻の妊娠中、逃げるように浮気をする男。パート先のアルバイト学生に焦がれる中年の主婦。不釣り合いな美しい女と結婚したサラリーマン。幼なじみの少女の死を引きずり続ける中学教師。まだ小さな息子とふたりで生きることを決めた女。満たされない思い。逃げ出したくなるような現実。殺伐としたこの日常を生きるすべての人に―。いまエンタメ界最注目の著者が描く、ヒリヒリするほど生々しい五人の物語。


窪美澄さんの本です。
 
この方は・・・なんていう小説を書かれる方なのだろう。
 
タイトルや装丁から優しいほんわかとした日常が描かれているのかしら、なんてのんきに読み始めたら、びっくりするくらい急降下する辛い現実が結末に待っていてびっくりしてしまいました。
 
そうだ窪さんといえばこういったひりひりとした痛みを書かせるととんでもなく上手いのでした。
 
短編集なのだけど、物語の中盤くらいまではこれはもしかしたらこの話は前向きな終わり方なのかもしれない、と思う気持ちがことごとく裏切られ、結末はどれも厳しすぎる現実でした。
 
だけどこれが・・・現実に起こりうるだろう、あまりにもリアルな日常であり、自分にはあり得ないと断言できることができない怖さがあるのです。
中盤からラストにかけての急降下。
暗闇に落ちていくような恐ろしささえ感じました。
 
唯一ラストの話だけは一筋の光が見えるようで、ほっとしたのでした。
 
正直いって読んでいて辛いほど厳しい現実のラストが待っている話ばかりです。
それなのに驚くほど心を持っていかれました。
窪さんだからこそ、の力でしょうか。
 
やはり凄い作家さんだと痛感です。
(4.5点)