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とっぴんぱらりの風太郎

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天下は豊臣から徳川へ―。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京(みやこ)でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へ転がっていく。やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太郎の前に現れたものとは?


万城目学さんの最新作。
 
書店に並んでいるのを見た時、そのあまりの分厚さに度肝を抜かれました。
新作が出る度に厚くなっている気がするのは気のせいでしょうか。
 
というわけで、辞書サイズのこの本を通勤の電車の中やらお昼休みや家で少しずつ少しずつ読み進めておりましたが、いかんせんこの分厚さです。
もう全然読み終わらないのなんのって。
前半は忍者の話とひょうたんの話と何処に着地するのか分からない感じで入り込みにくかったのですが、しかしつまらないという訳ではなく、ラスト3分の1からは続きが気になるし、どのような展開になるのか予測できないしでどうしようもないことになっておりました。
 
タイトルもとっぴんぱらりだし、風太郎と書いて、「プー太郎」と読むみたいだし(ふうたろうだと思っていた)、プリンセス・トヨトミに続いて、マキメさん自身もお気に入りのひょうたんがモチーフになっている。
ひょうたんが喋る、また摩訶不思議なおっさん(?)が登場するし、いつものマキメ氏だわ、と思っていたのも前半3分の1くらいでございました。
 
織田信長豊臣秀吉徳川家康がちらほらと出始めたあたりから、だんだんきな臭い話になってくるではないですか。
そもそも伊賀の忍の話、といいつつ主人公の風太郎は決して優秀ではない忍だし、相方(?)の黒弓も大層変わったへんてこな奴です。
まさかまさか・・・後半でこういう展開になるとは思いもしませんでしたよ。
 
ひさご様との蹴鞠のシーンあたりからぐいぐいと惹きこまれていって、ラスト数ページは胸が熱くなって溜まりませんでした。
 
誉田哲也氏が「武士道シックスティーン」を発表した際、著者紹介に「初めて人が一人も死なない小説」みたいな紹介がされていたけれど、本作は「マキメ作品にとっては初めての人が死ぬ小説」とでも言いましょうか。
 
終章では芥下の元に帰る風太郎と、悪態をつきながらもツンデレな芥下の生活までもを勝手に想像していたのに、まさかまさかの・・・・。
 
泣きます。このラスト。
 
「全力でアホをやっている」小説を書かれるイメージのマキメ氏でしたが、今回は全力で真面目です。
間が悪くてお人よしで人に小馬鹿にされながらも優しくて、ツンデレ女子に何気にモテる主人公はいつもの通りですが、かなりシリアスな小説に仕上がっております。
 
本屋大賞にもノミネートされていますね。
読むのは分厚くて相当大変ですが、文庫化したら買ってまた読むことでしょう。
 
今週土曜日からしゅららぼんの映画も公開なので、観に行こうと思います。
今回も全く、天才マキメ氏に感動させられました。
(4.5点)