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眠りの庭

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「アカイツタ」美大を卒業したものの、画家になることもなくくすぶっていた萩原は、美術評論家の真壁教授の紹介で、女子校の臨時教員として勤めることになる。美術準備室で見つけた、暗い目でこちらを見つめる少女の絵。自画像だと思ったそれは、謎の死を遂げた鈴木という女生徒が、真壁教授の娘・小波を描いたものだった。やがて萩原は小波に惹かれていくが、彼女には誰にも言えない秘密があった…。
 
「イヌガン」大手家電メーカーに勤める耀は、年上の彼女、澪と一緒に暮らして3年になる。掴みどころのない澪だったが、その穏やかな日々に満足していた。しかし、澪がときおり漏らす本音と怪しい行動に、耀は少しずつ不安を抱いていく。ある日、澪を尾行した耀は、思いがけない場面を目撃することになる…。過去を背負った哀しき女と、彼女に囚われていく男たち。2つの物語がつながったとき、隠された真実が明らかになる。あふれ出す情感を描き切った、心ゆさぶる墜落と再生の物語。


千早茜さんの本です。
 
千早さん、なかなか最近出版ペースが早くてチェックしていないと読んでいない本が増えていたりしますね。
この本も出ているのを知らずに慌てて予約したものです。
 
うん、やっぱり千早さんらしい作品でしたね。
 
こういう「危うさ」「禁忌」「絶妙なバランス」を書いたら右に出るものはいないと思います。
そしてやっぱり今回もエロティックなんですよね。
 
艶めかしいとか、官能的とか、そういったのとは違って。
静謐な中に、ピンと張りつめた糸の上にギリギリのバランスで保っている危うさみたいなものを感じます。
 
2編の物語は全く別のものかと思わせて、地続きの物語でした。
1編目の話では、私がかなり好きな感じの、ちょっと冷めた目線で物事を見ている感じの男性視点の話。
これがまた女子高の美術教師という、何とも言えない魅力のある職業をした男性な訳ですね。
 
そこに登場する、何処か危うげな少女。
高校を出たばかりの大学生だというのに、何処か超然とした雰囲気を持つ美少女。
 
あーもうこの子とどうにかなっちゃうんだな!と思う展開そのままに、溺れるように取りつかれる教師と、だけどそこに禁断のとかそういった言葉では表現できないものがあるんですよね・・・。
 
何だろう。
読んでいて辛いのに、目が離せない、そらせない感じ。
 
冷めた目線で世の中を達観していたような教師も、一度繋がったと思った女にのめりこんでしまう。
だけどその関係は対等なんかではなくて・・・・
 
そして2編目ではまた別の男性視点の話。
これがまた教師と全く別のタイプの男性なので、このラストで良いのだろうかと疑問ではあるのですがね、強烈な引力で惹きこまれる一冊でした。
 
この魅力をうまく表現できる言葉が足りなくて、つべこべ言わず一度読んでみてください。
 
やっぱり千早さん・・・好きだ!
(4点)