No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

からまる(文庫版)

イメージ 1
 

生きる目的を見出せない公務員の男、不慮の妊娠に悩む女子短大生、そして、クラスで問題を起こした少年……。注目の島清恋愛文学賞作家が“いま”を生きる7人の男女を描いた、7つの連作集。


千早茜さんの本です。
 
この作品、私と千早さんとの出会いの一冊であります。
デビュー作や全体的な千早さんの作品を見ると、とってもエロティックなのに静謐な空気が漂う作品が多い印象です。
そんな中でもこの作品は千早さんにとっては異色であり、とても深い一冊になっているかと思います。
 
単行本版で読んだ時、書店で話題になっていて手に取ってみたものだったのですが、予想以上に自分好みの作品だったのですよね。
文庫化したら買おうと思っていたので、購入しました。
 
いつもの千早さんらしい作品は「うみのはな」ですかね。
 
個人的に好きなのは、「まいまい」「ほしつぶ」「ひかりを」でしょうか。
 
「まいまい」の主人公の武生と女医の話が特に好きかなあ。
「ひかりを」ではその女医が主人公になっていて、あの時こう思っていたのだ、というのが別の視点で語られているのが興味深いです。
 
こういう登場人物間がリンクしている連作短編って大好きなんですが、当たり前だけど人それぞれ感じることや思う事に違いがあるんだな、ということに気付かされますね。
 
全体的に、飛鳥井千砂さんとかが好きな人は好きな作品かと思います。
けれどありがちな日常を描いている作品とはまた違うんです。
 
うまく言葉にあらわせないけれど・・・
ハッピーエンドと言い切れるほど幸福に包まれた話ではないけれど、一筋の光が見えてくる感じ。
細部に至るまで言葉の一つ一つが余韻に包まれていて、後々までじわじわと残っていくというか。
 
うーん、これはうまく伝えられそうもありません。
ぜひ読むことをお薦めいたします。
(5点)