七十代にして現役、マタニティスイミング教師の晶子。家族愛から遠ざかって育ち、望まぬ子を宿したカメラマンの真菜。全く違う人生が震災の夜に交差したなら、それは二人の記念日になる。食べる、働く、育てる、生きぬく――
窪美澄さんの本です。
やっぱりいい。窪さん、とても良いです!
戦時下を過ごした子供時代、自分ができること、やりたいと思う事を探し、マタニティスイミングスクールの講師になった晶子。
そのスクールの生徒だった真菜。
3.11の震災と、二人の過去から現代を辿る第一章、第二章の後に第三章で物語は締めくくられる。
晶子みたいなおばさん、今時は珍しくなってしまいましたね。
人の懐に勝手に飛び込んでくる、おせっかいおばさん。
だけど、そこには確かに愛情があって。
幼少期から家族にたっぷりと愛情を注いでもらい、裕福な家庭で育った晶子も、戦争中にはひもじい体験をする。
第一章は晶子の比較的平凡で幸せな人生が綴られる。
第二章では、真菜の裕福だけれども家族との触れ合いや交流が決定的に欠落している幼少期から、妊娠・出産・子育てまでの日常が続きます。
なんだろう、うまく言い表せない。
だけど、いいです。じわじわと深みが広がっていく。この魅力。
こういった読後感の余韻がある小説を読んだのは久々かも。
窪さん、要注目の作家さんです!
(4.5点)