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天に昇った男

昔、天に昇ろうとした男の伝説がある九州・星里の街。昭和五十一年の昇天祭りの日、祭りの櫓に三人の男女の死体が吊るされた。犯人とされた門脇春男は、十七年の収監ののち、死刑を執行される。ところが奇跡が起こり、彼は生き延び、釈放された。そして昇天祭りの夜、彼自身が伝説のとおりに天に昇ったが…。


島田荘司さんの本です。
 
シリーズものではない島田作品を読むのは少し久しぶりの気がします。
 
死刑執行の冒頭画面から、奇跡的に生き延びた門脇。
門脇が死刑に至るまでの過去の記憶を辿りながら、後半の現在、そして衝撃のラスト!
 
まさかそう来るとは・・・という驚きと、門脇の人生って一体何だったのだろう・・・と思うくらい物悲しいお話でもありました。
 
そんな中で知恵遅れのある富栄の無垢で純粋な子供みたいな存在がとても優しく感じれます。
だからこそ、一度門脇が幸せを手にした後のあのラストの展開に「富栄がまさか・・・・!」と悲しくなったのですが、あのラスト。
ということは現実の富栄は、もしかしたら本当に門脇の事をずっと想ってくれていたのかもしれない。
罪の意識からかもしれないけれど、富栄にそこまで考えられる頭がないのであれば・・・手紙をひたすらよこしてくれるだろうか?
 
と、そんな期待をしなければ本当に報われない門脇の人生でした。
 
死刑について考えさせられる、というよりも主人公が何とも哀れ過ぎて切なくなります。
(4点)