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夜は千の鈴を鳴らす 吉敷竹史シリーズ⑨

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JR博多駅に到着した寝台特急〈あさかぜ1号〉の二人用個室から、女性の死体が発見された。彼女は鬼島総業の女社長・鬼島政子で、検死の結果、死因は心不全と判明。だが、前夜、政子が半狂乱になり口走った「列車を停めて、人が死ぬ!ナチが見える」という意味不明の言葉に、捜査一課の吉敷竹史は独自の捜査を開始する。


島田荘司さんの吉敷竹史シリーズ第九弾。
 
今回は久しぶりの時刻ミステリです。
 
いやあ・・・・なんというか、やられたと思いました。
デジャヴを見ているような、何だろうこの既視感は・・・と思っていたら、終章が何とも切ないのは何でしょう。
 
自分がやったことは、回りまわって自分に返ってくる、という教訓がすっかりあてはまる内容ではあるのだけれども、何故かこの政子には同情心すら芽生えます。
 
悲しいことに、政子のような美人で商売の才覚があったとしても、田舎に埋もれたまま外の世界に出る機会さえも与えられねば、そのままその地で朽ちていくだけ。
現実はやはりある程度の経済的余裕がなければやりたい事を叶える事も叶わない。
 
政子の強い思いは犯罪に手を染める結果となり、最終的に自分に跳ね返ってきた訳ですが・・・それでも一大決心である意味自分で自分の道を切り開いたとも取れるので、何とも切ないです。
 
島田さんは事件の合間に挟むエピソードがいつも秀逸なので感心してしまいます。
本当上手いです。
(4点)