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幸せの条件

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新燃料・バイオエタノール用にコメを作れる農家を探してこい!突然の社長命令を受け、片山製作所・伝票整理担当の梢恵は、縁もゆかりもない長野の農村へ。ところが行く先々で「コメは食うために作るもんだ。燃やすために作れるか」と門前払い。さらには農業法人「あぐもぐ」の社長・安岡に、「まずは体で一から農業を知れ」と一喝され、これまで興味も知識も皆無だった農業に取り組むことに。そこで初めて農家が抱える現実を思い知るが…。彼氏にも、会社にも見放された24歳女子。果たして、日本の未来を救う、新しいエネルギーは獲得できるのか?農業、震災、そしてエネルギー問題に挑む感動の物語。


誉田哲也さんの本です。
 
タイトルやいつもの誉田さんの作品からの勝手なイメージで、警察小説とか結構ガッツリ重めの話かなあと思いながら手にとりました。
 
予約してから大分待った気がしますが、正直いつもの感じでそれなりに楽しめるのだろう、と読み始めたのですが。
 
主人公の梢恵(こずえ)の仕事のやる気のなさに当初苛々し、給料がもらえて生活ができて、誰でもできる仕事をしているけど現状で満足、みたいな全く向上心のない感じに好感を持てず、物語の方向性も全く掴めなかったせいか最初は全然入り込めませんでした。
 
しかしひょんなことからバイオエタノール用の米を作れる農家を探すため、突然長野まで行かされる羽目になった梢恵が、何故か農業を手伝う事になってから、とんとん拍子に成長を見る事ができるのです。
 
今までだったら考えられないくらい前向きに、分からない事は聞いて吸収し、出来る事は少ないながらも「誰かに必要とされている」と実感しながら居場所のある生活を送れる素晴らしさを感じる梢恵は、当初の頼りなさは全くなりを潜めてたくましくもあります。
 
また、この話の中には実際の3月11日の震災の話が盛り込まれていて、放射能が理由で農業を続けられなくなった人が出てきたり、美味しいお米を食べる事ができる幸せが凄く伝わってきました。
 
梢恵の成長物語でもあり、「農業小説」でもあり、震災の小説でもあり、満足の一冊。
美味しいお米が食べたくなりました。
(4点)