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何者

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影を宿しながら光を探る就活大学生の切実な歩み。あなたの心をあぶり出す書下ろし長編小説。


朝井リョウさんの本です。
 
とうとう平成生まれの直木賞受賞作家誕生!
と騒がれる前から注目していた(話題になっていた)朝井リョウさん。
新作が出る度に期待を裏切らず、どんどんファンになっていくのでした。
 
ということで、かなり読みたいと思っていた「何者」。
実際に就活を経験し、内定を取り、現在企業に就職している朝井さんの「就活をする学生の話」となると、期待してしまうではないですか。
 
会話のノリは、いつもの朝井さんらしくテンポの良い今風。
勿論文章は読みやすい。
そして、ツイッターフェイスブック・ラインなどなど、今時の若者であれば当然利用しているだろうSNSが作品の主軸となっています。
 
なんというか・・・凄い。本当言葉に表せないけど、何この読み終わった後の余韻!
「今」だからこそ書けたもの、就職難にあえぐ若者の葛藤やもやもや感・・・とにかくそういったものがぐっわーって伝わって来ました。
この気持ちを言葉で表現できない自分の語彙の少なさにびっくりですわ・・・。
 
私は大学というものに行っていないので、「シューカツ」という経験がよく分かりません。
高校の時の「就職活動」って、基本一社ずつしか受けられないから。
さして苦労せず、受けた会社に内定をもらえた(所詮その程度のブラック企業だったのだが・・・)事もあり、どちらかというと、その後苦労した転職活動の事を思い出しました。
 
新卒採用と中途採用はまあ全然違うけれど、受けまくってひたすら落とされる経験は恐ろしいほどしてきたのでね。。
自分を否定されている感じや、自信の喪失や、「何者でもない、何も持っていない自分を高く見せなければいけない」面接とか。
とにかくあの孤独で終わりが見えない戦いは今思い出しても辛すぎて、転職したいと思いながら動けない理由はそこでもあり・・・。
 
本作で痛かったのは、主人公。
何事もスマートで、物ごとを冷静に分析しているようで、実は知人のツイッターをチェックしては見下して安心している。
格好悪く見えなかったはずの主人公の素顔がさらされるラストシーン。
痛すぎて痛すぎて、えぐられるような痛みが襲いました。
 
私も20代前半の頃・・・(今も結構そうだけど)何かを見下して、批判していなければ気が済まないタチで。
後々、自分が以下に狭い世界しか知らなくて、世間知らずで、世の中のなんたるかも分かっていなかったのだ、と気付いてからはもう自信が持てなくなって、足元がぐらついて・・・。
今もずっと、そう。
 
私も「何者」にもなれない人間の一人。
あー痛い、痛すぎる。何でこんな気持ちになるのだろう。
 
久しぶりに凄い衝撃を受けた作品かもしれません。
直木賞受賞作。
これは納得。
(5点)