No-music.No-life

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なでし子物語

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ずっと、透明になってしまいたかった。
でも本当は、「ここにいるよ」って言いたかったんだ――
いじめに遭っている少女・耀子、居所がなく過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しむ少年、立海
三人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。
言葉にならない祈りを掬い取る、温かく、強く、やさしい物語。
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伊吹有喜さんの本です。
 
伊吹さんは、まだ「四十九日のレシピ」しか読んだ事がありません。
「四十九日~」はとても読みやすくほんわかした雰囲気の中に感動があって好きなのですが、この作品の冒頭がかなり暗くて重い雰囲気が漂っていて、何だか読みづらいかも・・・と思っていたのですが。
 
気付けばとっぷりと物語に浸っていました。
 
聡い子ゆえ、周りの大人の言葉が理解できてしまう幼い立海と、言葉は理解できなくとも覚えているその言葉を後々理解しては傷付き、自分の周りからどんどん離れていく事を恐れて空に閉じこもる耀子。
 
孤独を抱えた二人が出会い、強い絆で結ばれていきます。
二人のやりとりが時に微笑ましく、切なくもあり、それを見守る周囲の大人達も少しずつ柔らかい態度に変わって行く様が読んでいてほっとします。
 
お坊ちゃんと使用人の孫という立場であり、今は幼い故に何も状況が分かっていない事も、大人になったらを考えると切なくもなってきます。
 
だけど、大人になっても変わらない二人がいるような気もして、可能ならそんな二人の物語も読んでみたかったです。
(4点)