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Yの構図 吉敷竹史シリーズ⑥

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昭和61年8月18日、上野駅の隣接したホームに前後して到着した上越東北新幹線の中から女と男の服毒死体が発見された。2つの死体の側にはコスモスと桔梗の花が…。自殺か?他殺か?警視庁捜査一課の吉敷竹史は、不可解な事件の謎を追って盛岡へ。いじめ問題を素材に著者が渾身の筆致で描いた本格推理の力作。


島田荘司さんの本です。
 
今まで読んできた吉敷シリーズ(本作で6作目)の中で、一番面白いと思ったかも。
その気持ちは、解説で全て代弁してくれています。
 
今まで吉敷目線であまり物語が進んで行く訳ではなかったので、何となく吉敷の人物像が見えてこない部分があって。
その中で本作は、安っぽい言葉だけど「等身大」の吉敷を見る事ができます。
 
いつもはキラリと光る名推理で、最初から犯人の目星がついていたり、するすると謎を解いてしまう事の方が多いけど、今回は吉敷の予想がことごとく外れていく。
 
そして、元妻の通子にも似た薄幸な美人(人妻)に翻弄される吉敷。
邪険に扱っているようで放っておけないのは、やはりどことなく通子に似た幸の薄さ、雰囲気のせいでしょうか。
吉敷の好きなタイプの女性でしたよね?
 
この作品が発表されたのが1986年にカッパノベルスにて。
その当時と現在も、いじめの根本は変わっていない事が分かり、切なくなります。
 
事件の真相が心中だったのか、それとも「犯人」達の仕業だったのか・・・・・
いずれにしろ、何とも物悲しい気分にさせられる結末でした。
 
菊池刑事の憎めないキャラクターが好感を持ったので、ラストの悲しい出来ごとは菊池刑事にとっての最大の試練でしたかね。。
ともあれ、最初から最後まで飽きることもなく、一気に読了しました。
面白かったです。
(5点)