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14階段 検証 新潟少女9年2ヶ月監禁事件

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事件の真相に迫る渾身のルポルタージュ
第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞した本作品は、2000年1月に発覚した「新潟少女監禁事件」の真相にはじめて迫ったルポルタージュである。引きこもり男が当時9歳だった少女を9年2ヶ月という長期にわたって監禁しつづけた前代未聞の事件は、同居していながら監禁に気づかなかったという母親についても様々な関心を呼んだ。著者は彼女を徹底的に追い続け、取材に成功する。母はなぜ、犯人と少女のいた2階につながる「14階段」を上ることができなかったのか。そして、男はなぜ、少女を部屋に閉じこめたのか。新進気鋭のノンフィクション・ライターが、ついに事件の謎を解き明かす。


窪田順生さんの本。
 
ミステリ小説や推理小説を良く読むので、誰かが殺されるだの殺人事件や猟奇的な事件が起こりまくる。
どんなに陰惨な内容だとしても、「フィクション」だと思えば何とか割り切って読める。
その中でも私がどうしても苦手なものがいくつある。
暴力・虐待・女性への暴行、である。
 
それだけはどうしても嘘だと分かっていても読んでいて息苦しいほどの不快感に襲われる。
しかしルポルタージュともなると、嘘偽りもない「現実に起こった」事が赤裸々に描かれる。
 
この事件、とっくに私が物ごころついた頃、世間を騒がせたニュースということもあり、記憶にしっかりと残っている。
少女から大人へと成長する過程を9年以上もの間、身も知らぬ男の部屋に監禁された状態でいなければいけなかったむごさを思うと、どうしようもないやりきれなさが襲った。
 
世間を知らぬまま、外の世界を見ぬまま――9年というのは、あまりにも長い。
 
結局のところ、監禁された中で何があったのか、男は何故このような犯行に走ったのか?
今調べてみてもそういった類の事はほとんど書かれていない。
本書でもそのあたりはほとんど語られておらず、犯人の母親へのロングインタビューを通して犯人側から事件を見ているという点がとても興味深い。
 
就職もせず親のすねをかじる引きこもり息子の暴力に逆らえず、14段の階段を上り息子の部屋に入る事ができなかった母親。
亡くなった父も息子を溺愛するが、伝わらない愛情。
 
過去を辿るうち、犯人の心が屈折していく様が浮き彫りになっていく。
それが直接の原因だったのかは想像の範囲に過ぎないとしても、父親との類似点を発見するくだりなどはぞっとしてしまう。
 
そして、全く反省の色が見えない犯人と、何処までも息子を擁護する母と。
 
この虚無感はなんだろう。
これは紛れもなく起こった現実の事件。
やりきれない。
(4点)