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短劇

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懸賞で当たった映画の試写会で私が目にしたのは、自分の行動が盗撮された映像だった。その後、悪夢のような出来事が私を襲う…(「試写会」)。とある村に代々伝わる極秘の祭り。村の十七歳の男女全員が集められて行われる、世にも恐ろしく残酷な儀式とは?(「秘祭」)。ブラックな笑いと鮮やかなオチ。新鮮やオドロキに満ちた、坂木司版「世にも奇妙な物語」。


坂木司さんの本です。
 
あーこういうの好きだーと思いました。
ブラックユーモア溢れる短編集。
 
私は坂木さんを知ったのが「和菓子のアン」だったので、その後の「ワーキング・ホリデー」、「ホテルジューシー」と読んでいくと、ほのぼの系働く人の物語、を書かれる人のイメージができあがりました。
しかし意外にも、デビュー作の「引きこもり探偵」シリーズを読んでみれば、さらりと黒い部分が描かれている。
 
実は元々、人間の黒い部分やシビアな現実を描く本質は持っていたのではないかなあ、とこの短編集を読んでみて改めて思いました。
 
文章の読みやすさはもう文句なし。
ちょっとした幸せになる読後感のものがちょっとだけ入っているなか、後味の悪いもの、ブラックユーモアのもの、生々しくグロいものなどなど、バラエティ溢れる作品が収録されていて興味深いです。
 
解説でも書かれている通り、「秘祭」の青春なまはげは当人にとっては精神的苦痛を伴う行事なのだけど、実際に想像してみると何か笑える話です。こういう行事があったら、青少年の非行はなくなる気がします(笑)
 
個人的に印象的だったのは、「目撃者」(宮部みゆきさんの財布が語り手、と同じくらいインパクトが!)、「MM」「最後」「しつこい油」「ゴミ掃除」「物件案内」(こんな不動産屋がいたら安心なのに!)、「ビル業務」「いて」でしょうか。
 
坂木さんのイメージを覆す斬新な一冊。
読んで損はないと思います。
ある意味綺麗な話ばかり書かれているイメージも一新。人間らしさを思わず見たような、ますます坂木さんの作品が好きになりました。
(4点)