互いのことに深く干渉しない。その暗黙のルールは気ままな私が作っているのではなく、佐藤さんの微笑みが作っている―。30過ぎの美里と、ひと回り歳上の恋人・佐藤さん、その息子で大学生のまりも君。緑に囲まれた家で“寄せ集めの家族”がいとなむ居心地いい暮らしは、佐藤さんの突然の失踪で破られる。それは14年前の、ある約束のためだった…。繋ぎとめるための言葉なんていらない。さみしさを共有できたら、それでいい。
千早茜さんの本です。
今期個人的に大注目の作家の一人、千早さん。
待望の最新作でございます。
千早さんの勝手なイメージとしては、圧倒的な文章力とエロティックな雰囲気が漂っているという感じなのですが、今回はエロティックは少し抑え気味の、「家族」小説とでもいいましょうか。
しかし家族とはいえども、父親の佐藤さん、その恋人の美里、その息子のまりもの不思議な3人での共同生活を送る、「疑似家族」。
美里、まりも、佐藤さんと語り手が変わって行くにつれ、ほんの少しずつこの三人が救われていく気がしました。
千早さんの小説を読むと、何だか知らないけど胸がきゅっと締めつけられるような気持ちになって、読後しばらく余韻にぼうっとしてしまう。
今回もしっかり余韻が残り、しかも何だかとても安心感の残る余韻だったのが嬉しくなりました。
こういうしっとりとした文章を書ける千早さんがうらやましい!
やっぱり大好きだなあ、こういう小説。
(4点)