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鈴の神さま

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やさしい想いに満たされる、ほっこりファンタジー!
疲れた心にじんわり効きます。

四国の山間にある小さな町・高野町を舞台に、さまざまな時代に生きる人々と、
愛くるしい男の子の姿をした鈴の神さまのふれあいを温かく描いた短編連作。

中学生の冬弥は春休みに訪れた四国の祖父の家で、不思議な男の子・沙耶に出会う。
甘いものが大好きな可愛い子どもにしか見えない沙耶は、実は「鈴の神さま=鈴守」だった。
ずっと続けてきたピアノとの向き合い方に悩んでいた冬弥は、沙耶と過ごす時間を通して
やわらかな気持ちを取り戻していく――表題作「鈴の神さま」のほか4編を収録。


知野みさきさんの本です。

2012年、第4回角川春樹小説賞を受賞作。
 
図書館で何か良い本はないかなあと探していて、ふと目についた気になるタイトル。
素敵なカバーイラストに面白そうかも、と手にした本でした。
 
全く予備知識なし、タイトル&ジャケ(?)借りをすると、大抵の場合完全に外れか、まれに面白い作品に出会える事があるのですが、あまり期待はしていませんでした。
 
や、もうこれヤバいです。
絶対読んで欲しい!!
 
冒頭数行を読んだ瞬間から圧倒的な読みやすさと温かみのある文章に惹きこまれます。
 
そしてある中学生が田舎で出会った「鈴の神さま」とのお話。
 
その神さまは、平安時代の貴族のような言葉を遣い、千年以上も生きているのに、見た目がまるで5歳児の子供の姿をしています。
甘い物(特に雛屋のおまんじゅうなどの和菓子)が大好きで、物珍しいアイスクリームを食べ過ぎてお腹を壊したり、添加物が沢山入ったポテトチップスを食べて蕁麻疹が出たり。
甘い物をねだる時の泣き落としも、その可愛さに老若男女があっさりとお菓子を渡してしまうようなもの。
 
しかし、その鈴の神さまも、お目付役の楓殿の姿も、見える人にしか見る事ができません。
 
冒頭の中学生の少年との話は一旦幕を閉じ、時代も性別も立場も違う、鈴の神さまとの交流が描かれた話が続き、そして最後に成人した一作目の少年の話(現在)に戻ります。
 
大人になったら、もしかしたらもう姿を見る事ができなくなっているのでは?
そんな不安な気持ちをよそに、ピアノから奏でられる音につられてやってきたのは、鈴の神さま。
 
再会シーンではつい目頭が熱くなってしまいました。
 
最初から最後まで面白く、そして感動して涙腺が緩みました。
温かな筆致が後押しして、鈴の神さまの可愛さにやられながら読み終えました。
 
これは、ぜひとも読んでほしい作品!!
もっと話題になってもいいのにな。
ぜひぜひ読んでみてください。
(5点)