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晴天の迷いクジラ

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ただ「死ぬなよ」って、それだけ言えばよかったんだ――『ふがいない僕は空を見た』の著者が放つ待望の二作目。感涙長編小説。


窪美澄さんの本です。
 
ふがいない僕は空を見た」で初めて窪さんを知り(というか、本作が2作目なのですが)、好みではないけどとにかくとんでもない衝撃を受けた作品だと思いました。
 
第二作、さてどうだろう?と恐る恐る読んでみると・・・「好き!この感じ、凄く好き!」と素直に思える作品でした。
 
R-18文学賞出身ということもあり、前作はややそっち路線が際立って話題性もあったのですが、受賞作と同時収録されている話が、とにかく圧倒的な筆力と描写でぐいぐい惹きこまれたんですよね。
正直、受賞作は無理!と思ったのですが、そのあとの連作短編で心を鷲掴みされて。
だから自分が、この作家の作品が肌に合うのか、それとも合わないのかは判断つきかねる部分があって。
 
しかしどうでしょう。
この衝撃の二作目。
何と上手いんだろう。筆力の安定感、続きが気になって仕方がないあの感じ。
救いがないようで、それでいて最後に訪れる微かな希望、未来。
 
良いなあ。凄く良い。
 
「家族」という形には、欠陥や歪な愛があったりして、愛されたい、愛したいと思う気持ちが、強すぎても弱過ぎてもいけない。
愛したいと思う気持ちとは裏腹に子供を愛せなかったり、過保護になるあまりに子供の自我を潰してしまったり。それぞれ歪な家族の中に育った三人の男女(年齢も性別も立場も違う)が、迷い込んだクジラを見に行く事になったことから、少しずつ再生への道を歩み始めていきます。
 
個人的に「ソーダアイスの夏休み」が秀逸。
海老君とその双子の忍がとても良い。
 
親に過保護に愛されるあまりに自分の気持ちを封じてしまう正子が、最後に母親に反論して自分の主張をしたところが格好良かったなあ。
 
非常に良い作品でした。今後にもかなり期待!
(5点)