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窓の向こうのガーシュウィン

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十九年間、黙ってきた。十九年間、どうでもよかった。「私にはちょうどいい出生だった」未熟児で生まれ、両親はばらばら。「あなたの目と耳を貸してほしいんだ」はじまりは、訪問介護先での横江先生との出会い。そして、あの人から頼まれた額装の手伝い。「ひとつひとつ揺り起こして、こじあけて、今まで見たこともなかった風景を見る」心をそっと包みこむ、はじまりの物語。


宮下奈都さんの本です。
 
未熟児で生まれ、保育器に入れられることなく育った主人公。
体は細く肌はかさかさ、人の言葉を聴こうとすると雑音がして最後まで聞き取れない。人の言葉の裏を読みとることが不得手。
 
奇跡的に採用された会社はすぐに倒産し、これならばとホームヘルパーの資格を取得。
担当替えを言い渡されるばかりの中、唯一話をしていても雑音が入らずに言葉を聞く事ができる横江先生のところに通うようになる。
 
そこで先生の息子の額装の手伝いを任されることになり、同級生の孫も加わり居心地の良い時間が訪れる――
 
とまあ、ざっとそんな感じの話なのですが、なんか何とも形容しがたい感情が湧きおこります。
 
劇的な変化は何もなくて、ちょっと掴みにくい主人公の性格もあいまって、上手く伝えられない。
 
だけど、人より感情の読み取りが苦手な主人公は、だからこそ素直に相手の言った言葉を受け止めてしまう。
そこに嘘はなく、人から見たら苛立つ原因にすらなるのかもしれない。
それでも、この横江家の三人の何とも器の広い事よ!
 
そしてその環境に順応していく主人公が、少しずつ相手に認められて、「何かが足りない」と思い続けていた気持ちが変化していく様は読んでいてすーっと心が洗われるようでした。
 
宮下さん、こういう作品が凄く上手いんだよなあ。
(4点)