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鍵のない夢を見る

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望むことは、罪ですか?彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい。そんな願いが転落を呼び込む。ささやかな夢を叶える鍵を求めて5人の女は岐路に立たされる。待望の最新短篇集。


辻村深月さんの本です。
 
大人向けの作品、という感じでしょうか。
高校生や大学生が主人公の話が多かった初期作品から、少しずつ妙齢の大人が主人公の作品も書かれるようになった辻村さん。
直木賞あたりを狙うとしたら、こういう作品なのかな、と思います。
 
どん底まで落とされても、最後にはささやかなハッピーエンドが待っている、というものが辻村さんの作品には多いですが、本作はそれは当てはまりません。
昨今流行りの「イヤミス」というほどではないのですが、きゅーっと胸が苦しくなるような嫌な感じの展開が続き、最後にも後味の悪い感じが残るような。
 
好みとしてはこういう作品達も嫌いではないです。
ただ、ハッピーエンドではありません。
 
何が嫌な感じなのか、と言うと、この作品に収録されているそれぞれの短編に出てくる登場人物が、決して空想上の人間ではないということ。
つまり、現実にこういう人いるよな、と思える人物であることでしょうか。
特に、自分がいつこの主人公達の立場になってもおかしくない、と思う程度には非常に現実的な訳です。
 
辻村さんお得意の女同士の嫉妬や醜い妬みや人間関係のドロドロした感じは健在で、且つ癖のあるダメ男がことごとく登場します。
小説の中の話でしょ、と割り切れないのは、こういう人が実際にいるよね?と思えるくらいリアルだから。
 
特に、これから30代に突入する自分にとって、結婚やら出産やらは現実問題としてある訳で、その後の人生も本作に出てくる主人公達のように良い事ばかりではないのだろう、と予測出来てしまう事が一番嫌な気持ちになりました。
 
非常に読み応えのある作品だと思います。
ぜひ。
(4点)