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ぬるい毒

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ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る―。私のすべては、23歳で決まる。そう信じる主人公が、やがて24歳を迎えるまでの、5年間の物語。


本谷有希子さんの本です。
 
久しぶりに本谷作品を読んだかも。
実は結構好きなのだけど、地元の図書館にあまり置いていないのですよね。
 
たまたま発見したところ、芥川賞候補作だったようですね。
 
何だろう?
全編に漂う「不穏な予感」。
どうしようもない男に惹かれる主人公と、人をさりげなさを装って侮辱、陥れる事を生きがいとしているようなどうしようもない男がどうしても好きにはなれないのに、だけどまるで金縛りにでもあったかのように、動けない感じ――。
 
上手く言えない。
最近流行りの「イヤミス」のいや~な読後感とも違う、凄く読んでいて嫌な気分になるのに、目を逸らせない感じなのですよ。
 
読み終えた後もやっぱり嫌な気持ちがもやもやしているのに、だけど最後まで読むのをやめられなかった。
凄く不思議な魅力に溢れた作品。
 
結局、主人公の妄想だったのかもしれないし、色々な捉え方ができると思うのだけど、毒の中でも、何処か中途半端な、「ぬるい」毒なのですね。
だから死なないけど、毒の影響を受けない訳ではない、という感じ。
 
本谷さん、やっぱり上手いです。
 
(4点)