No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

幸せまねき

イメージ 1
 
ことなかれ主義のサラリーマン、真太郎(45歳)。テニススクールのコーチと不倫をはじめた専業主婦、小絵(38歳)。
同じ学校の問題児と交際中!?、穣(17歳)。クラスでイジメにあっている、翔(11歳)。そんな中山家の人々と暮らす、タロウ(1歳・オス犬)とミケ(2歳・メス猫)。
移ろう日々の中、ささやかだけど、幸せな日々を取り戻すため、今、タロウとミケと家族の復讐劇がはじまる――。


黒野伸一さんの本です。
 
黒野さん、ちょっとはまってしまいそう。
限界集落株式会社」「万寿子さんの庭」と今回で黒野さんの作品を読むのは3作目なのですが、今の所外れがない。
凄く読みやすくて、コミカルなのに何処か切ない。
最後にほわーんと感動が押し寄せてくる感じが、癖になります。
 
今回は、ある平凡な家族の崩壊から再生までを描いた、猫視点の物語でした。
仕事ばかりで家庭を顧みない父親、テニススクールのコーチと不倫する綺麗な母、彼氏との関係に悩む高校生の長女、クラスでイジメに遭っている弟、その家族の飼い犬のタロウと飼い猫のミケ。
 
ミケとタロウがこの一家の一員として、人間のように会話をしているのが面白いです。
猫同士の集会、犬と猫の違い、人間がしていることを不思議に思いながら、的確に家族の問題を捉えている。
 
すれ違い家族の絆が失われ始めた事にいち早く気付く犬のタロウ。
猫のミケも、どうにか家族の絆を取り戻すべく奮闘しています。
 
少しずつすれ違い始めた四人家族の関係が、勇気あるタロウの行動によって、少しずつ良い方向に進み、修復していく様が描かれます。
 
そこに至るまでのプロセスは沢山の問題や困難が立ち向かっている。
人間でもない、動物であるタロウとミケが、必死になって家族を修復させようとう奮闘する姿が悩ましく、切ないです。
 
個人的に、飄々としている掴みどころのない長女の彼氏が良い味を出しているなあと思います。
 
初版ということで、誤字と脱字を1箇所ずつ発見。
しかも、1つは絶対間違えたらいけない名前のミス。
更にその内容がとても間違えたらいけない部分だったので(笑)、文庫版では直されている事を祈るばかりです。
 
家族っていいなーとしみじみと感じながら、人間よりも家族のために頑張っているミケとタロウが可愛く愛おしく思いました。
良い作品です。ぜひ。
(4.5点)