「weather」（伊坂幸太郎著）は、結婚披露宴を舞台に、伊坂ワールドが展開する作品。主人公の大友は、親友・清水の披露宴に出席することになったが、新婦から、女性関係が派手な清水の調査を頼まれる。最近、不審な言動が多いというのだ。司会の女性、ウエディングケーキ、キャンドルサービス。どこもかしこも怪しげに思えてくる披露宴。そして宴もたけなわとなった時、大友はあることに気づくのだが……。
他、おばあちゃん掏摸師を主人公にした「天使」（山本幸久著）、SFテイストの「ふりだしにすすむ」（中山智幸著）、搦め手から“幸せ”に迫った「ハッピーエンドの掟」（真梨幸子著）と「幸せな死神」（小路幸也著）を収録。
思いも形も色とりどりの、五つの“幸せ”を堪能できる作品集。
中山智幸
名前に「幸」がつく作家5人の「幸せ」をテーマにした短編集。
アンソロジー小説にしては、なかなか楽しめました。
伊坂さんは安定した面白さで、オチは読めたものの、何だかとても幸せな気分。思わず目がうるうるしてしまい、とても幸福な気分になりました。
最近やたらと「伊坂幸太郎もどき」の文章の作家さんが増えた気がしますが、伊坂さんの作品を読むと他の作家さんのもどきに比べて、安定した文章力を感じますね。やっぱり伊坂さんはこうじゃないと！みたいな。
山本幸久さんの本は、単体で読んだ時はそこまで印象に残らなかったのですが、本作は非常に印象的でした。
ラストはハッピーとは言えないものだったかもしれませんが、スリ師のおばあちゃんだなんて！なかなか思いつかないと思います。
唯一中山智幸さんだけは初めて読んだ作家さん。
最初、理解するまでに話に入って行けなかったのですが、後からじわじわと良さが迫ってきました。
そして真梨さん・・・
うーん、「殺人鬼フジコの衝動」の後味の悪い『イヤミス』（後味の悪いいや～な気分にさせてくれるミステリのこと、らしい・笑）の印象が強く、今回も悪い意味で似たような印象のいや～な気分になる作品で。
幸せをテーマに、と言われればハッピーエンドとか幸せいっぱいのいい印象しか持たない気がするのですが、「不幸」を描くという全く正反対の発想は素晴らしい。
だけど、３本目までなかなか良い雰囲気で読んでいた私にとって、ここでガクンとテンションを落とされました。
私は敢えて、真梨さんだからこそ「幸せ」な話を書いて欲しかったかも。
これでは悪い意味で、新鮮味がないし、何だか「Happy」をテーマにしている作品の中で、浮いてしまっています。
その流れで読んだ小路幸也さんの死神の話。
伊坂さんの「死神の精度」の印象がどうしても強いので、物語があまりにも短すぎて何だか中途半端な印象を受けてしまいました。
決して悪くないんだけど、真梨さんの後、というのも災いしたのかもしれませんね。。
という訳で、何だか幸せな気持ちとは別の所に行ってしまった感じでしたが、読みやすいのは良かったです。
（4点）
