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舟を編む

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玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。


三浦しをんさんの本です。
 
先日本屋大賞を受賞した事でも話題になっている作品でした。
以前から予約をしていたのですが、相当待ちまして、ようやく手元にやって参りました。
 
辞書作りの話、と言われても今一つピンと来なくて、そんなに期待せずに読んだのですが、全編を通して凄く優しい目線で描かれているのに好感を持ちましたし、キャラクター一人だけの視点に頼らず、別の視点からも作品を見据える事で、より深みがましていました。
 
20代後半の登場人物が、40代前後まで歳を重ねるくらい、この一冊の本では時が経ちます。
それだけ、辞書を出版する事には膨大な時間が必要になるのです。
 
辞書を開いたのは、そういえばいつぶりだっただろう?
そう思ってしまったのは、複数回の更生・チェックを経て、新語・古語・死語などなど、どの言葉を入れてどの言葉を削除するか、限られたページ数とスペースで、どれだけ親切で分かりやすくシンプルな言葉で説明をするのか・・・何度も推敲し、沢山の時間をかけて作られていく辞書。
 
作中にも登場する、「○○ではないもの」という説明の不便さ、納得しました。
例えば「女」=「男ではないもの」みたいな説明ね。
そうすると、次は男とは?と辞書を調べてみると、「男」=「女ではないもの」のように無限ループしてしまうという現実が待っている。
そう言えば、私が持っていた安物の辞書はきちんとした説明がなかったかも。
辞書なんてどれでも同じではないか?と失礼ながら思っていましたけど、こんなにも沢山の人の時間や想いが詰まって、一冊の辞書になっているんだ!と思ったら感動すら覚えました。
 
辞書や言葉に対して尋常ない執念と興味を持つ、変わりものの人々。
その人達ほどには言葉に対して執着を見せられない「普通」の人。
そんな色々な人物がそれでも協力し、力を合わせて一つの辞書を完成した時。
読み手にもその感動はじんわりと伝わってきて、とても温かい気持ちになりました。
 
これを映像化すると、ちょっとばかし地味かもしれませんが、本屋大賞受賞作の映像化は定番になっているので、どうなるのでしょうか?
 
あと、「まじめ」がしたためたラブレター(というか、「恋文」か?)の誠実過ぎて何が言いたいのか分からない感は、結構私のツボでした(笑)
 
(4点)