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アントキノイノチ

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杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。遺品整理会社の見習いとなった彼の心は、凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や同い年の明るいゆきちゃんと過ごすことで、ほぐれてゆく。けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り…。「命」の意味を問う感動長篇。


さだまさしさんの本です。
 
岡田将生くんと、榮倉奈々が出演した映画版を先に見ているのですが、「原作と違う」「原作は良かったのに」というレビューをよく見かけました。
映画のラストに納得できないものを感じた私は、原作をいつか読んでみたいと思っていたのです。
 
図書館でようやく借りることができ、読んでみました。
 
さださんという人は、決して文章が上手という訳ではないけれど、言葉の一つ一つに愛情がこもっているのを感じるので、読んでいて凄く丁寧だなあと思えて、好感を持てます。
 
で、結果。
原作の方が良かった、という結論です。
 
映画で違和感を覚えてならなかった、突然ゆきちゃんが遺品整理の仕事から、介護福祉士に転職した事の不自然さと、唐突な形で死んでしまうラストにしっくりいかなかったのです。
 
でも、原作のゆきちゃんは死なないし、杏平とゆきの二人が背負っていた過去を、とても前向きな形で捨てる事ができて、新たなスタートを想像できる温かなラストにようやく満足した心地です。
 
解説は例の如く「アントキノイノチ」の映画監督が書いているのですが、映画として作品を作るにあたり、「かなりの部分を端折らなければいけない」と大事な部分を削り、涙を誘おうと無理な肉付けをした結果、消化不良感だけが残りました。
 
「あの時捨てなかった生命」の尊さに重点を置いたら、あんな安易な死を撮る事などできなかったはず。
さださんの原作がシンプルだけど大事な事をしっかり読者に伝えてくれたのに対して、映画はあまりにもお粗末過ぎました。
 
映画版では岡田将生くんの演技に圧倒されたのですが、原作を読んだらゆきは榮倉奈々のイメージにぴったりでしたね。身長が大きいのだけが難点ですが。。
 
映画でも割ときちんと描いていたと思ったのですが、本作を読んで遺品整理という仕事の想像を絶する現場のシーンには、思わず気分が悪くなってしまうほどリアルでした。
人が一人死ぬという事は、こういう事なのか・・・と妙に思ったりもして。
 
映画版でガッカリした人、ぜひ原作を読む事をオススメします。
(4点)