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みなさん、さようなら

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芙六小学校を卒業したのは全部で107人。みんな、団地に住んでいた。小学校の卒業式で起きたある事件をきっかけに、団地から出られなくなってしまった渡会悟。それを受け入れた悟は団地で友だちを作り、恋をし、働き、団地の中だけで生きていこうとする。「団地に閉じこもってたら、悟君の友だちは減る一方でしょ。さみしくない、そういうのって?」月日が経つにつれ一人また一人と同級生は減っていき、最愛の恋人も彼の前を去ろうとしていた。悟が団地を出られる日はやってくるのだろうか―。限られた狭い範囲で生きようとした少年が、孤独と葛藤に苛まれながらも伸びやかに成長する姿を描く、極上のエンターテインメントであり感動の物語。第一回パピルス新人賞受賞作。


久保寺健彦さんの本です。
 
「空とセイとぼくと」「ブラック・ジャック・キッド」に続いて、久保寺さんの作品を読むのは3作目。
過去読んだ二作が、何かすっごくもやもやするのに、物語に惹きつけられてやまない強いインパクトを残した作品だったので、もうお腹一杯で読めない・・・と地元の図書館にあっても敢えて読まずにいた本作でした。
実はこれがデビュー作だったのですね。
 
読もうと思ったきっかけは、濱田岳君主演で映画公開が決まっているらしく、あらすじを読んで興味を持った事です。
 
ゆっくり読もうと思ったのに、またも一気読みしてしまいました。
この、久保寺さんの紡ぎ出す圧倒的な吸引力は何だろう?
ある事件をきっかけに、団地から出ていくことができなくなった主人公の、30歳までの人生が描かれます。


団地、今はあまり見かけなくなった気がしますけど、小学生の頃は団地住まいの子が結構いて、同じ団地に住んでいる故に仲が良かったり結びつきが強かったりして、子供心にうらやましいなあと思っていました。
 
狭い世界故、家庭の事情や何やらがご近所に筒抜けになっていたり、だけど結びつきが強いから、何かがあったら皆で協力して助け合ったり目をかけたりという繋がりもあったり。
特に本作では、昭和の良き時代からポケベルの登場する現代までが、時代の流れと共に描かれていて、どんどんご近所付き合いが希薄になり、さびれていく団地の姿、同級生がどんどん団地を出ていき寂しくなっていく様も描かれているので、胸がきゅーってなるような、息苦しさすら覚えました。
 
特に中学に通えず、それから30歳になるまで団地の中で勉強、運動、労働をする主人公と、外の世界に目を向けどんどん外に出て行ってしまう同級生達との隔たりは、当然だけれども寂しくなったり。
彼女と決定的にすれ違ってしまうシーンが特に読んでいて痛かったです。
 
読んでいて苦しいのに、ページをめくる手が止まらない。
上手いんだよなあ、この方は。
映画、どんな感じになるのでしょうか?多分、観に行ってしまうと思います。濱田君好きなんで(笑)
(4点)
 
濱田岳×中村義洋監督で、映画化(2012年公開予定らしい)