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空白の叫び<下>

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少年院を出た彼は本当に更正できたのか

第三部。少年院を退院した彼らはそれぞれ自分の生活を取り戻そうとするが、周囲の目は冷たく、徐々に行き場をなくしていく。そして、再び3人が出会う日がくる。 少年犯罪を少年の視点から描いた、新機軸のクライムノベル。


貫井徳郎さんの本です。
 
上巻は転落に向かってどんどん最悪な展開になっていくので、読んでいる方も気が滅入る程でしたが、あんなに長く暗く思えた第二部の少年院を退院した現在の彼らの生活から第三部は始まります。
 
ぐいぐい惹きこまれました。
転落からの浮上は見込めないだろう、という予測を上回る負の連鎖。
立ちきれない過去。更に犯罪に手を染める事になる三人。
彼らの行きつく末に、未来も希望も見いだせないと悟ってしまってから、苦しいのにページをめくる手が止まりませんでした。
 
三人の中で、一番に殺人など、特に親殺しなどしそうもないと思われた「普通の中学生」である神原の転落、結末があまりにも悲しかった。
見た目や内に黒い何かを秘めていると思える久藤や葛城に比べ、悪意など欠片も持っていないように見えた神原の、黒い部分がどんどん深まり大きくなっていくにつれ、どんどん悪い方向に変わっていくのが分かる。
それを見ている読者をも置いて、最終的にはあの結末へ向かうとも知らずに――
 
死んでも良いと死ぬことを望む人間は死ねず、これから生き抜いていけると信じて疑っていない人間があっさりと死んでしまう。
あまりにも簡単に人を騙せた、欺けたと思いこむ浅はかな神原。
何であんなに簡単に人を信じてしまうのか、自分の爪が甘いと感じられなかったのか・・・
 
執拗に恨みを持たれたり、嫌がらせを受ける事は、人を一人殺してしまった代償としては当然の事なのかもしれません。
しかし、この何とも言えないもやもや感は何だろう?
罪を犯した人間は、更生する機会も場所も与えられないのだろうか?
 
色々な事を考えてしまう、深く余韻の残る話でした。
(4.5点)