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灰色の虹

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身に覚えのない殺人の罪。それが江木雅史から仕事も家族も日常も奪い去った。理不尽な運命、灰色に塗り込められた人生。彼は復讐を決意した。ほかに道はなかった。強引に自白を迫る刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。七年前、冤罪を作り出した者たちが次々に殺されていく。ひとりの刑事が被害者たちを繋ぐ、そのリンクを見出した。しかし江木の行方は杳として知れなかった…。彼が求めたものは何か。次に狙われるのは誰か。あまりに悲しく予想外の結末が待つ長編ミステリー。


貫井徳郎さんの本です。
 
これも会社の上司が貸してくれた中の一冊。
かなり分厚い本でしたが、気付いたらのめりこんでいました。
 
前半は、話の繋がりが見えてこなくてなかなか話に入り込めなかったのですが、一連の事件の繋がりが見えてきた時、江木を襲ったあまりにも理不尽過ぎる現実が辛すぎて、いつか光が差すだろうと願わずには読み続けることができないほどでした。
 
具体的な証拠もなしに、強引に犯罪を犯したと自白させる事もあった時代。
今では人権問題も含め、大問題になるだろう捜査方法も、当時は今よりももっと頻繁に行われていたのでしょう。
捜査方法や不十分な証拠だけで起訴、有罪判決を下された容疑者の訴えなど聞く者もいず。
 
やっていないことをやったと答えざるを得ないほど追いつめられ、反論する事もできなかった江木。
暴力的なほどの圧力で、自白を強要する刑事。
上告を退け、有罪判決を下す裁判官。確かな記憶もなく、曖昧な目撃証言を貫く事件の目撃者。
 
誰を恨めばいいのか。一体何が悪かったのか。
全うで平坦ながらも平凡な人生を、ただただ歩んできただけの江木が、何故逮捕されねばならなかったのか。
 
息子の無罪をただひたすらに信じ続けてきた母親。
 
吉田修一さんの「悪人」を読んだ後にも似た、どうしようもないほどの焦燥感に包まれました。
 
本当に悪い人間は殺人を犯した真犯人なのに、冤罪で言われもない罪で服役することになった江木を救う手立てがなかったのか。。
アンハッピーエンドの結末ですが、それでも江木の冤罪を確信する人物が現れた事、それだけでも救われる思いでした。
 
読み応え十分の秀作です。ぜひ。