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水の柩

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老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。


道尾秀介さんの本です。
 
道尾さんの本を読む時は、ただひたすらにワクワクします。
今度はどんな作品を届けてくれたのかな?とページをめくると・・・割と分厚いのに、すらすら読めた事に驚きました。
今回は、文学作品の位置づけでしょうか。
 
道尾さんが描く小学生は、良くも悪くも普通の子、が多い気がします。
しかも、ちょっと鈍感で子供っぽい子。
だからこそ、今回は同級生のいじめられている敦子の事を、なかなか気付いてあげられないもどかしさが痛かったです。
 
女性はしたたかな生き物だから、男子側から見たら可愛くて可憐な女の子に見えても、実は悪の親玉だったりする。
敦子へのいじめが、女子同士なのに殴る蹴るの暴力であることが、何とも痛々しくて・・・。
 
それと、祖母の隠していた過去が明かされた時、そのあとの気落ちぶりが何だかとにかく切なくて仕方がなかったです。
 
最初から最後まで、ずーっと薄い膜がかかったような・・・もやもやした気持ちがぬぐえず、最後もやっぱり気持ちが晴れないままでした。
個人的には、ちょっと自分の好みとは違っていた作品だったかもしれません。
 
ただ、天泣にかけて、「テンキュウベリマッチ」は良かったな。
 
そういえば、トップランナーの観覧に行った時に取材に来ていたあの川やダムの光景は、この作品に繋がっていたんだなあ、と思ったら何だか感慨深かったです。
そう考えてみると、作品をもっと違った意味で見られるようになってくるかも。
 
道尾さんの文章は、何だか時々人をはっとさせる言葉が出てくるんですよね。
あー読み終わってしまったわ。
次回作を楽しみに待ちましょう。