No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

一瞬の風になれ 第三部 ―ドン―(再読)

イメージ 1
 
 高校の最終学年を迎えた新二。入部当時はまったくの素人だったが、今では県有数のベストタイムを持つまでに成長した。才能とセンスに頼り切っていた連も、地道な持久力トレーニングを積むことで、長丁場の大会を闘い抜く体力を手にしている。
   100m県2位の連、4位の新二。そこに有望な新入生が加わり、部の歴史上最高級の4継(400mリレー)チームができあがった。目指すは、南関東大会の先にある、総体。もちろん、立ちふさがるライバルたちも同じく成長している。県の100m王者・仙波、3位の高梨。彼ら2人が所属するライバル校の4継チームは、まさに県下最強だ。
 部内における人間関係のもつれ。大切な家族との、気持ちのすれ違い。そうした数々の困難を乗り越え、助け合い、支え合い、ライバルたちと競い合いながら、新二たちは総体予選を勝ち抜いていく――。


佐藤多佳子さんの本です。
 
いやー再読なのに、完全に物語の世界にのめり込んでしまいました。
面白くて、そして何だか目頭が熱くなって仕方がなかったです。
 
難を言うならば、前半話の中心にもなっていた天才な兄の健ちゃんがほとんど登場しないこと、谷口との恋模様は?とか、最後まで描かれていない部分がとても気にはなったのですが。
 
しかしそんなのは差し置いて、レース本番のスピード感が、もう凄いのです。
なんだろ、文章だけでこんなにドキドキハラハラするなんて!という感じ。
私は全くスポーツに興味がないので、陸上のりの字も知らない無知です。
だけど、リレーのあの疾走感、バトンミスをしたらどうしよう・・・勝てるだろうか?と登場人物達と同じ目線で試合展開を見ているみたいな。そんな気分なんです。
 
実際に見た事もないのに、トラックが頭の中に想像できていて、そこに彼らがいる。
そんな不思議な感覚に襲われていました。
 
どんどん早くなっていく新二。
本気になり始めた連。
 
私はとにかく、50m走で、新二達が走る100m走くらいのタイムがかかるくらい運動音痴なので、もし目の前で走る所を見たら、文字通り「一瞬の風」のようにびゅんって走っていくのだろうなあ・・・と想像したりするのでした。
 
第三部だけやけにボリュームが多いのですが、均等に全三巻このボリュームで書いたら、もっと脇役達の描ききれなかったエピソードも入れられたのかなあ?と続きが気になってそんな事を思ってしまいます。
 
脇役の根岸も桃内も好きだし、鍵山がこれからどんどん力をつけていくだろう、一年後・二年後も見たい気がします。
 
それで、一番の希望ですが。
謎解きはディナーのあとで」と本作のみドラマ化で、映画化されていない本屋大賞一位の作品なわけですが・・・。
原作ファンとしては、ドラマ版があまりにも悲しい作品になっていたので、個人的に無名の俳優さんで良いので、しっかりとしたものをもう一度作ってほしいです。今度は映画化希望!