作り手と売り場を結ぶ糸をたくさん鞄に詰め込んで、出版社の新人営業、井辻智紀は今日も本のひしめくフロアへと向かう。―でも、自社本をたくさん売ってくれた書店を訪ねたら何故か冷たくあしらわれ、文学賞の贈呈式では受賞者が会場に現れない!?他社の先輩営業マンたちにいじられつつも、波瀾万丈の日々を奮闘する井辻君の、こころがほっとあたたまるミステリ短編集第一弾。
大崎梢さんの本です。
個人的に大崎さんの本には、私の中で好き嫌いがあって。
全然ダメだ・・・と思うやつと、凄く面白いというものが極端なんです。
ただ、デビュー作の「配達赤ずきん」のシリーズものは、流石元書店員だっただけあって、面白いのです。
本屋さんの内情が凄くリアル!
という訳で、別シリーズらしいですが、出版社の営業マンが本作の主人公です。
日常ミステリ、しかも舞台が本屋さんというのがとても良かったです。
本が好きな人は凄く嬉しいかも。
本屋さんや本にちなんだ謎が出てきて、新人営業マンでちょっとあか抜けない地味な「ひつじ君」こと井辻が、何故かその謎を解いてしまう、という短編集なのですが、本に携わる書店員さん、編集者、作家、出版社の営業と、本が作られて売られ、人の手に渡るまでの陰に隠れているドラマが鮮やかに描かれています。
ちょっと無理やりかな、という謎解きの展開もありつつ、本を大好きな人が一所懸命仕事してるな、というのが凄く伝わってきて、優しい気持ちになれました。
出版営業さんが他社の本を一冊選んでPOPを作って売り上げを競うなんて、凄く面白そう。
本屋さんが選んだ本屋大賞もほとんど外れはないし(個人的に、謎解きはディナーのあとでは例外ですが・・・)、本が大好きな人がプッシュした本というだけで興味があるなあ。