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春から夏、やがて冬

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スーパーの保安責任者の男と、店で万引きを働いたDVの被害に遭っている女。偶然出会った2人は、驚くべき因縁で結ばれていた!?


歌野晶午さんの本です。

「葉桜の季節に君を想うということ」以来の衝撃、みたいな事が書かれていたから今度はどんな大どんでん返しが?!
と期待して読んだのですが、今回は何とも切ないどんでん返しでしたね…


起こってしまった出来事に対して、「あの時こうしていれば」「もしあの時こうだったら」のたらればを言い出したらキリがないけど、こんなに不幸が重ならなければ…と思わずにはいられません。


交通事故で愛娘を失い、精神的なショックを受けた妻は自殺、大切な家族を失った平田は、自身も癌に侵される。

平田の勤め先の店で万引きをした末永ますみは、職もなく、同棲中の彼氏からDVを受けている。

そんな二人が出会い、亡くなった娘と同じ年の生まれであるという縁から、平田はますみに金銭的な援助を申し出る…


誰も幸せにならない話でした。何が悪かったのか、と考えたら途方もないほど…。

主人公の淡々とした語り口は冷たいほどに感情が感じられず、娘を失った喪失感の大きさにはっとさせられます。
平田への感謝を、あんな形でしか返せなかったますみの不器用さも切なかったです。