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魚神 io gami

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かつて一大遊郭が栄えた、閉ざされた島。夢喰いの獏、雷魚などの伝説が残る島で、本土を追われた人々は自治組織を作り、独自の文化を営んでいる。捨て子の白亜とスケキヨは、この島で捨て子の姉弟として育った。伝説の遊女の名を継ぐ姉・白亜と、デンキを放つ弟・スケキヨ。ふたりは互いのみを拠りどころに生きてきた。スケキヨは、あるきっかけから薬学の知識を身につける。しかし、その美貌ゆえ、悪評高い裏華町に売られてしまう 。離れ離れになり動揺したふたりは、ある夜、過ちを犯し仲違いしてしまう。成長した白亜もまた廓へ売られ、やがて島随一の美しい遊女となる。スケキヨのことが忘れられず、無感覚のまま身をひさぐ毎日。彼女は遊郭の女郎や裏華町の男達を通じて徐々にスケキヨへと近づいて行くが、彼の周囲には不穏な噂が漂っていた。強く惹 きあい、拒絶を恐れ近づけない姉弟。ふたりが再び寄り添うとき、島にも変化が……。


千早茜さんの本です。
 
この前初めてこの作家さんの本を読んだのですが、凄く面白かったので他の作品もと思って借りてみました。
 
これがデビュー作か!と思うほど、レベルの高い作品だと思います。
文章力の巧みさもさることながら、この不思議な世界感と深みのある余韻――
そして何処か気怠けなのに、狂おしいほど切ないような気持ちにさせてくれます。
 
国の取り決めも常識も通用しない、何処か忘れ去られてしまったような閉ざされた場所にある島。
親に捨てられた事すらも自覚できないまま、この場所にいるのが当たり前に育ってきた姉弟
やがて成長し、運命の定めにあらがう事もできずに別々の道を歩む事になった二人。たった一度の出来ごとを通して、元にいた幸せな居場所には戻れないと分かりながら、ただ日々を過ごしていくばかり・・・・・


劇的な何かが起こる訳ではないのですが、読んでいてとにかくキリキリと切ない気持ちにさせてくれます。
ただ、個人的に姉と弟の、ふとしたら脆く壊れてしまいそうな関係がリアル過ぎてちょっと怖さも感じたかな。
作品の質としては4.5点だと思いますが、好みの問題で、個人的には4点。
 
ただ千早さんの小説、物凄く自分好みです。好きな作家がまた一人増えたかも。