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写楽 閉じた国の幻

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わずか十ヶ月間の活躍、突然の消息不明。写楽を知る同時代の絵師、板元の不可解な沈黙。錯綜する諸説、乱立する矛盾。歴史の点と線をつなぎ浮上する謎の言葉「命須照」、見過ごされてきた「日記」、辿りついた古びた墓石。史実と虚構のモザイクが完成する時、美術史上最大の迷宮事件の「真犯人」が姿を現す。


島田荘司さんの本です。
 
最近御手洗潔シリーズも読んでいないし、何だか唐突に島田荘司が読みたい!と思い立って借りてきた一冊。
実は読んでみようと気になっていたのだけれども、684ページという分厚さに躊躇しておりました。
 
島田さんはやはり上手いなあと思うのですが、ページ数が多くても読ませてくれるんですよね。
ただ、今回は全く知識も興味もない「浮世絵」がメインの話。
少々想像がつきにくいジャンルだったせいで、難しい!の一言。
 
ただ、島田氏なりに20年近く構想を練っていたというだけあり、この物語を執筆するにあたり、相当の調査・下調べをしてきたのだろうなと思うくらい、かなり説得力のある説が展開します。
 
ただ、個人的には・・・
江戸編の方が読みやすかったのと、人物に温かみが感じられる印象があって。
現代編は何処となく淡々とした印象を受けたのと、息子を回転式の自動ドアに挟まれて亡くなってしまってからの夫婦間の亀裂と問題が、後半は全く触れられていなかったり、中途半端になっているなあと。
江戸編だけで一冊にするか、現代編なら写楽の話だけに統一するか、息子を失った夫婦の話として別の物語にするか、いずれかをじっくりと書きあげても、島田氏であれば十分面白い作品を書けるのではないかな?という印象はありましたね。
 
でも、読んだ後に「読んだ―!」という達成感を得られるこの感覚は久しぶりで結構満足しています。
あとがきには、いつ出来るかは分からないけれども、懸念していた中途半端に終わってしまった物語をまとめる意味でも続編を書けたら、というような事が書いてあるので、長い目で期待して待っていようかと思います。