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蜜姫村

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変種のアリを追って、東北の山村に迷い込んだ、東京の大学の講師で昆虫学者の山上一郎は、瀧埜上村の仮巣地区の人々に助けられ、命をとりとめた。翌年、山上は医師でもある妻の和子を説得し、一年間のフィールドワークのために、再び仮巣地区を訪れた。この村には医師がいなかったため、和子にとってもそれはやりがいのある仕事に思えたのだった。優しくて、親切な村の人々。だが、何日かその村で生活していくうちに、和子は違和感を覚える。―みんな健康的過ぎる…医師もいないのに…。


乾ルカさんの本です。
 
わー!面白かった!
レビューが低めだったので、好き嫌いはあるかもしれないけど、個人的にはこういう話、大好きです。
 
第一部では、ホラー色がとても強い不穏な空気が満ち満ちていて、いつもの乾さん節が炸裂という感じです。
このおどろおどろしさが良いんです。
乾さんの筆力がぐいぐい読者を引き込みます。
 
夫のフィールドワークのため、ひょんなことからとある辺鄙な場所にある村に一年間暮らす事になった和子。
医師として村民の役に立とうと動くが、好意を突っぱねられ、明らかに体調が悪化している人間に対しても「明日になれば治る、心配はいらない」と迷惑がられるだけだった。
高齢の人間が多いのに、何故か皆健康なのだ。むしろ、不自然な程に健康的過ぎる――
 
不信を抱き始めた和子だったが、ある日、夫が村人から「よそ者は立ち入ってはならない」と言われた場所へと入ってしまい、行方不明になり――
 
 
そして第二部。
第一部で近づいてはいけないと言われた場所の全貌が見えて来ます。
 
 
はっきり言うと、第二部からガラリとフィクション的な、何ですかね。
古代日本の不思議な舞台設定、というような色が濃くなります。
第一部が非常に現実的な話なので、第二部の展開で「無理!」ってなってしまう人ももしかしたらいるかもしれませんね。
 
でも、むしろ第二部から面白くなっていきました。個人的には。
特に優子と大蜂の、ハッピーエンドにならないのではないかと思わせる不穏な空気の中、「ささやかな幸せ」が展開されていく下りでは、いつこの幸せが壊れてしまうのか・・・・と怖くてハラハラしてしまうのです。
 
ハッピーエンドとは言えない展開ですが、それでも悲しい結末にはならなかったのにはほっとしました。
 
蜜姫と黒王の話であるとか、何処までもおどろおどろしいホラーな作品に突き詰めていくこともできたと思いますが、そっちの展開にはならず、それが逆に私としてはツボだったようです。
 
大蜂が良かったです。
そして、少女から女性に変わっていき、初めて本気で人を愛するという事を知った優子の心がふるふると読み手にも伝わってきて、胸が熱くなりました。
 
乾さん、良いですよー。注目の作家です!