No-music.No-life

ヤフーblogから移行しました。

ツナグ

イメージ 1
 
突然死したアイドルに。癌で逝った母に。喧嘩したまま亡くなった親友に。失踪した婚約者に。死者との再会を望むなんて、生者の傲慢かもしれない。間違いかもしれない。でも―喪ったものを取り戻し、生きるために会いにいく。―4つの再会が繋いだ、ある真実。新たな一歩を踏み出す連作長編小説。


辻村深月さんの本です。
 
サイン会に参加したくて購入した本でしたが、買って損はなかったと、大満足の一冊でした。
 
講談社から発表している作品は、大体作品のリンクがあったり、以前登場してきた人物がさりげなく登場してきたりとファンとしては楽しみな訳ですが。
講談社以外から出している作品は、独立した作品が多かったりして、リンクの楽しみもなくて作品としても今一つ「もう一度読みたい」と思えるものが最近はなかったのですよね。
(「ふちなしのかがみ」、「太陽の座る場所」あたりがそうかな)
 
でも、この作品は・・・
 
辻村さん特有の女子との友情のあの微妙な感じを始め、心理描写が相変わらず共感できてしまうところを始め、
本作では50代の男性を主人公にしていたり、30代の男性を描いていたりと新境地を切り開いています。
 
最初は慣れないせいか違和感があったのですが、それでも短編一つを読み終わる頃にはいつしか物語に引き込まれていて、違和感もなくなっていました。
 
死者と生者を「ツナグ」役目を果たす「使者(ツナグ)」。
ツナグの男の子が、「名前探し~」のいつかと「子どもたちは~」の浅葱を足して2で割ったようなイメージなのにも共感を持ち、何よりこの不思議なツナグという存在が良い。
 
死者と会う事により、生前では決して分からなかった事実を知る。
知りたくなかったこと、知ることができて良かったこと。
 
生きている人間が死んだ人間に会うということはそれなりのリスクを伴う。
 
会う事によってそれを良かったと思うか、後悔をするか――
 
それでも、こんな存在がいたとしても信じてみたくなる。
死者と生者をたった一日だけ巡り合わせる仲介者・ツナグ。
 
不思議な余韻と感動に包まれました。


ぜひともこれはシリーズ化して欲しいくらいです。
これから歩美がどう成長していくのか。
ツナグの存在する意味は?
 
それにしても、「アイドルの心得」の主人公の考え方に共感し過ぎてびっくりした・・・。
ショックを最小限に抑えるため、出来うる限りの最悪の事態を想定する――ってまんま自分と同じですよ。
 
 
個人的には、「待ち人の心得」が一番好きかな。
 
さてさて。サイン会がとても楽しみです!