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風が吹けば

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今時の高校生・矢部健太は、夏休み直前、1984年の夏にタイムスリップしてしまう。そこで出会った「つっぱり」メンバーたちとふれあい…。「インディゴの夜」の著者、待望の“痛快”初長編。


加藤実秋さんの本です。
 
加藤さんと言えば「インディゴの夜」ですが、インディゴシリーズですっかり魅了された私は、加藤さんの他の本も読んでみようと思い立ち、早速最新刊の本作を借りてみました。
 
最初は前振りが長いというか、1984年(自分の生まれた年!)という時代設定に全然ついていけなくて、あー微妙かもなんて思って読んでいたのです。
 
だけど、いつのまにか物語に引き込まれている。
そういえば、インディゴシリーズを読んでいる時も最初はそうだったんだ。
何だろう、加藤さんってとても不思議な作家さんです。
 
今時の高校生の健太は、それなりに平穏で幸せで「そこそこ」の人生を送れればそれでも良いと思っている。
今の時代には珍しくもなんともなく、逆を言えば個性がなくて、面白味にかける人間なのかもしれない。
そんな健太が、ひょんなことから1984年にタイムスリップしてしまう。
 
そこで出会った、ツッパリのメンバー達。
その時代だからこそ格好良いと流行っていたものの何もかもが、健太から見れば古臭くてダサいものに見える。
 
けれどもいつしか、何かに没頭して熱くなったり、友情に燃えたりしている。
健太のその変化が何だか読んでいるこっちまで嬉しくなって、今の時代を生きる私には少しうらやましくもなるのでした。
 
最後の、健太と久保田君のシーンではニヤリとして、何だか泣きたくなるほど感動してしまいます。
 
1984年に青春を送っていた人にはとても懐かしく、その時代を知らない人には新鮮味を持って読む事ができるかと思います。
 
加藤さんはインディゴシリーズの時もそうですけど、今の世代との違いを堂々と物語にしていて、それでいて現代の流行とかもちゃんと調べて取り入れているという感じがするから好感がもてます。
 
年齢層が高い作家(40代前後)にありがちだけど、無理して最近の流行を入れようとしたりしている、背伸びしている感じが空回りをしている作家が多い気がするんです。
だけど全然「こんなの今時の人はしてないよ」みたいな表現になったりしてしまっている。
 
その点加藤さんは、自分が経験してきた事を惜しげもなく取り入れて作品に活かしつつ、ちゃんと現代と調和をしている感じが本当に良いんですよー!
だから加藤さんが描く女性は、何だかついていきたくなる姉御!って感じのキャラが多いのかな(笑)