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マジカル・ドロップス

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タイム・カプセルにあったのは、中学時代の親友が遺した40粒の「ドロップ」。それは、見失った想い出をよみがえらせる不思議なドロップ。講談社児童文学新人賞・野間児童文芸新人賞・椋鳩十児童文学賞を受賞した著者が描く、まったく新しい、ハートフルファンタジー

風野潮さんの本です。
 
全く期待していなかったのですが、予想以上に面白かったです!
風野さん、アンソロジーとかでもしかしたら読んだ事があったかもしれないのですが、一冊の本としては読むのは初めてでした。
 
児童書を描いている作家さんのイメージだったので、こういう爽やかそうなタイトルで引きつけておいて、案外なんてことのない普通の話を描く人なんでしょ?みたいな感じで侮っていました。
 
しかし読み始めてから数分しないうちに、気付いたら物語に惹きこまれていました。
しかも、続きが凄く気になって本を読みたい気持ちが強くなるくらいのもの。
 
面白い作品の中でも、続きが気になって落ちつかなくなる小説って実はまだ数える程しか出会った事がない気がするのですが、そういう作品の一つになりました。
 
中学時代に亡くなった親友がタイムカプセルに思いを込めていれた、ドロップ。
 
2時間17分の間だけ、15歳に戻れる――
 
冗談と希望を込めてタイムカプセルに入れたドロップ缶。
40代になった菜穂子の元に、亡くなった親友・真由美との思い出のカセットテープとドロップが戻ってきた。
 
何十年も前のドロップ。
何となく口にして噛み砕いてみると――15歳の当時の姿をした自分がいた。
 
同じくドロップを口にした友人の美智と共に15歳の姿になってしまった菜穂子は、「ナオ」と名乗り、ひょんなことから息子の要のバンドのボーカルとして加入をすることになる。
 
40代の母親となった菜穂子には見えていなかった、息子と娘・夫の知らなかった一面が、15歳のナオになった事で少しずつ見えてくる。
 
2時間17分だけしか15歳の姿でいられないナオは、高校生バンドコンテストの予選を突破していくのだが――

これは、多分自分が40代になってから読んだら、もっと泣けたんじゃないかと思える。
 
中学時代の記憶は結構鮮明に残っているのに、気付いたらもう10年以上も前の事になっている今だってこんなにじんとしてしまったのだから。
 
ファンタジーチックな話なのに、だけど現実にこういう事があってもいいんじゃないかな、なんて思える無理のないストーリー展開。
 
主人公の菜穂子が親しみやすいキャラクターだったことや、高校生とバンド活動という大変共感ができる(笑)話だったこともあって、思っていた以上に楽しく読めました。
 
まさかラストで菜穂子があんな風にカミングアウトする展開になるとは思っていませんでしたが、それもありなのかなあ、なんて。
 
ただ、谷崎君の恋の行く末を案じてしまうと・・・不憫でなりませんが(笑)