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正義ノミカタ I'm a loser (文庫版)

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僕、蓮見亮太18歳。高校時代まで筋金入りのいじめられっ子。一念発起して大学を受験し、やっと通称スカ大に合格。晴れてキャンパスライフを満喫できるはずが、いじめの主犯まで入学していた。ひょんなことから「正義の味方研究部」に入部。僕は、元いじめられっ子のプライドに賭けて、事件に関わっていく。かっこ悪くたっていい、自分らしく生きたい。そう願う、すべての人に贈る傑作青春小説。


本多孝好さんの本です。
 
この本を初めて読んだ時の衝撃が忘れられません。
本の内容が、というよりは・・・・・・これがあの本多孝好が書いた本なのか!という衝撃の方が大きかったですね(笑)
 
本多さんと言えば、深く余韻の残るほろ苦いミステリを描く人、というイメージなのですけど、過去作品と比べたら本作は異色としか言いようがないくらい、とにかく今までとは違っています。
 
例えるなら、乙一さんの作品を読んだ後に読む「あとがき」の衝撃、くらいなもんで(と言ったら分かりますよね?)、あの真面目な作風の本多さんが!という驚きが一杯だったのです。
 
だけど不思議とこの軽快な文章と物語の展開にぐいぐい引き込まれている。
そして、元いじめられっ子だった主人公が大学で経験する事で、少しずつ成長していく姿を共感しながら読む事ができるのです。
 
何よりこの作品を読んでいて印象的なのは、例えば高卒の奴は高卒であることがいつまでも引っ掛かり、余程突出した才能を開花させることができない限り、社会に出てもずっと底辺をさまよい続けるしかないというようなことであるとか、
主人公のように三流大学に通っている分際の人間が、社会に出てものし上がる事はできない現代の社会を痛烈に批判しているメッセージのようにも思えるのです。
 
そんな底辺にいる人間が「正義」を信じてどこまでやっていけるのか。
 
間先輩のミステリアスな雰囲気が個人的には好きなんですけど、だけどもし自分が間先輩に同じように誘われたとしたら、果たしてどういう道を選ぶか?と考えると、底辺でも這い上がる事ができなかったとしても、やはり主人公と同じ道を選ぶような気がするのです。
 
とにかく、高卒で安月給で大した経験も資格もない私みたいな人間が読むと、とにかく色々と考えさせられる作品であります。
 
この作品以降の「チェーン・ポイズン」でまた以前の本多さんらしい作品を発表し(そしてこの作品は物凄く良いのですが!)、本作のような作品は錯覚だったのか?と思わせておいて、雑誌の読み切りでまた本作のような作風のものを描かれていたので、今後作品として発表される日も近いのではないでしょうか。
 
この作風は、何だかんだで私は結構好きだったりします。
 
表・本多孝好と、裏・本多孝好といった感じでしょうか。
ぜひぜひ。