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光待つ場所へ

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「しあわせのこみち」
T大学文学部二年生、清水あやめ。「感性」を武器に絵を描いてきたという自負がある。しかし、授業で男子学生・田辺が作った美しい映像作品を見て、生まれて初めて圧倒的な敗北感を味わい……。

「チハラトーコの物語」(「『嘘』という美学」を改題)
美人でスタイル抜群、ガチに博識でオタク。チハラトーコは、言葉に嘘を交ぜて自らを飾る「嘘のプロ」。恩師、モデル仲間、強気な脚本家との出会いが彼女にもたらすものとは?

樹氷の街」
中学校最後の合唱コンクール。指揮を振る天木だったが、本番一ヶ月前になっても伴奏のピアノは途中で止まり、歌声もバラバラ。同級生の松永郁也が天才的なピアノの腕を持つことを知った彼は……。


辻村深月さんの最新作です。

 
ああ・・・・・・!
ほんっとにどうでもいいけど、この本に辻村さんの直筆サインが欲しかった。
 
買って損はないと思う本。
図書館で借りて読んだけど、サイン会行きたかったよう。
 
スピンオフ短編集といえば、「ロードムービー」が記憶に新しいですが、この作品は「冷たい校舎の時は止まる」のスピンオフでした。
 
今作は、「冷たい校舎~」「スロウハイツの神様」「凍りのくじら」+「ぼくのメジャースプーン」(「名前探しの放課後」もか)といった3作。
 
特に、私が大好きな松永郁也と、芦沢理帆子が出てくるというだけで・・・・もう期待せずにはいられませんでした。
 
一番にニヤニヤしながら(大好きなキャラクターだけに)読めたのは、「樹氷の樹」。
 
そして一番心をわし掴まれたのは、「チハラトーコの物語」。
 
考えさせられ、胸が苦しくなって最後にハッとさせられたのが、「しあわせのこみち」。
 
どの作品も素敵過ぎた。
上手く言葉に表せないのがもどかしいんです。
でも・・・
 
辻村さんの作品は、前半でぎゅっと心を苦しくさせるような展開にさせておいて、ラストでその苦しさが解放される読後感を伴います。
 
「しあわせのこみち」の田辺君。
あやめと絶対波長があうと思います。個人的に田辺君は好みです(笑)
 
「チハラトーコの物語」の、存在感がありまくる赤羽環。
 
環が単体で出てきたら、絶対好きになれない我が強いキャラクター。
だけどもう環の弱さも知っている読者の身としては、環が可愛くて堪らない。
そんな環に挑もうとするチハラトーコのしたたかさ。
潔くて、好感が持てました。
 
樹氷の樹」の、郁也と理帆子。
理帆子は完全に脇役として出てくるのに、郁也にとって「思いっきり甘えられる相手」である理帆子もまた、すぐに郁也に何かがあったら駆けつけてくれるという――
 
凍りのくじらでは、小学生。
名前探しの放課後では、高校生。
 
本編では中学生の、郁也・天木・椿・秀人が出て来ます。
 
特にこの登場人物たちは大好きなので、一番楽しんで読めたかも。
 
 
最近は間接的な作品の繋がりしかない感じだったけど、こうやって好きなキャラクターをメインにしたスピンオフ小説を書いてくれる辻村さんが好きです。
 
でも、「子どもたちは夜と遊ぶ」だけ、直接的なスピンオフ作品がないんですよね。
 
いつか浅葱が出てくる事を願っているのですが。
 
 
すごく、すごく、満足した一冊でした。