造花の蜜はどんな妖しい香りを放つのだろうか…その二月末日に発生した誘拐事件で、香奈子が一番大きな恐怖に駆られたのは、それより数十分前、八王子に向かう車の中で事件を察知した瞬間でもなければ、二時間後犯人からの最初の連絡を家の電話で受けとった時でもなく、幼稚園の玄関前で担任の高橋がこう言いだした瞬間だった。高橋は開き直ったような落ち着いた声で、「だって、私、お母さんに…あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか」。それは、この誘拐事件のほんの序幕にすぎなかった―。
連城 三紀彦さんの本です。
連城さん、初めて読みました。
書店で見かけて気になっていて、地元の図書館に置いてあったので早速借りてみました。
なかなかどうして、分厚いので読むのに大層時間がかかりました。
昨日も最後まで読み切ってしまおうと思ったら、かなり時間がかかって睡眠が削られるのなんの(笑)
ある事情を抱えた親子。
ある日幼い息子が誘拐事件に巻き込まれる――
身代金の要求があるも、普通の誘拐事件とは趣が異なる手法で犯人に翻弄される、関係者達。
しかしその誘拐事件は、単なる「表」の誘拐事件に過ぎなかったのだ・・・・・・
二転三転する展開、
誘拐に巻き込まれた息子と、その家族の複雑な関係が明らかになっていく展開から、
計らずしも誘拐犯に協力する事になった青年に関わる「裏」の事件が徐々に浮き彫りになり――
スリリングであり、不穏な空気が終始立ちこめる様は、一体次に何が起こるのだろうという不安な気持ちを膨らませます。
しかし難点は、序盤から後半までの展開は疾走感があるのですが、後半からラストまでは、いい加減飽きてきてしまうというか、失速してしまった感じがしました。
面白いのだけど、無駄に長すぎる気がしました。
様々な登場人物から事件の真相が空かされていく展開は、面白いのだけど、散漫な印象も受けました。
しかし、
直木賞作家だけあって、文章力と内容はとてもクオリティが高いです。
機会があったら他の作品にもチャンレンジしてみたいと思いました。