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八朔の雪 ―みをつくし料理帖―

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神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!


高田郁さんの本です。
 
この前、池袋の某書店で桜庭一樹さんと道尾秀介さんのトークショーが行われるとのことで、申し込みに行ったら定員で締め切りになっていて間に合わなかったという悲しい出来ごとがあったのですが、
その時にふらふらと文芸書のコーナーを見ていると、お薦めで陳列されていたこの「みをつくし料理帖」シリーズが目にとまりました。
 
図書館で借りてみつつ、そんなに期待していなかったんです。
 
時代小説というと、宮部みゆきさんやあさのあつこさんの作品は読みやすく好きなのですが、心のどこかでやはりちょっと抵抗があるんですよ。
苦手意識というか。
 
だけど・・・・どうでしょう。
 
この澪という女子の何と強くて勇ましい事!
 
幼い頃に両親を亡くし、偶然拾われた商人に良くしてもらい、料理人としての腕をしこまれていたところで再び襲った不運で、商人の芳と共につましく暮らしている澪。
 
蕎麦屋の店主の種市との偶然の出会いをきっかけに、種市と共に店を切り盛りしながらの生活の中で、自分だけのオリジナルの料理について模索をする日々。
 
快く自由に料理を作らせてくれる種市の優しさ、少し言葉は厳しいけれどいつも的確なアドバイスをしてくれる小松原。心の臓が弱りがちな芳を診てくれる医者の源斉。実の娘に接してくれるかのように優しく力になってくれる芳。同じ裏店に住むおりょうと旦那の伊佐三、吉原との繋がりがあるらしい又次・・・・
 
澪の周りにいる人たちの、なんと心温かいこと!
 
これでもかというくらい、澪の前には難題や苦労が押し寄せてきて、澪はその度に立ち止まり、苦しみもがきます。
それでも、その苦労や難題に立ち向かい、打破しようという気持ちの強さが本当に凄い。
そして周囲の人間の温かさが重なるから、何度ほろりとさせられたか分かりません。
 
身を削り、思考錯誤と努力を重ねた結果に作り上げた澪の料理は、一つ一つがとてもキラキラしていて、とにかく美味しそう!
 
悲しい事や辛い事があっても、逃げない勇気をもらったような気持ちです。
 
文句なしの☆5つの良作です。