ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。もういない、わたしの弟。――天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。ある雪の日、わたしの耳に、懐かしい音が響いて……。
いしいしんじさんの本です。
同じく友達から借りた本の中の一冊。
いしいさん、そういえばブログ繋がりの方の記事の中で、何度か名前を目にしたことがある方でした。
ただ、よっぽど機会がなければ読む事はなかっただろうなと思うので、貸してもらえて良い機会だと思い、読んでみました。
ここ最近堅苦しい(笑)ミステリ本とか、ちょっと重い話ばかり読んでいたせいで、
こういう柔らかい文体(というか、女の子の語りが幼い感じで、或る種独特でなかなか慣れなかった)の作品を読むのも久しぶりのことでした。
ああっ!
もう冒頭から、なんだろ。
何とも言えないむずむずした気持ちで一杯になってしまいました。
過去を現在から語っている事や、弟の存在を過去形として語っている事・・・・
なんとなく、何かがあったんだということを察してしまうので、切なくて切なくてたまりませんでした。
突然襲った弟の奇病。
軽やかで心地良かったはずの声が、ある事故をきっかけに人に吐き気や不快感を起こすような声に変わってしまった――
それから、弟は文字で会話をするようになり、家族や友達からも少し距離を取って行動するようになった。
それでも、物語をしたためて姉に披露することは前と変わらなくて、当時の姉は弟の抱えていたであろう苦悩に気づく事ができなかった。
そして、再び起こる突然の不幸・・・・・
弟君が創作している小説が、小学生であることもあって、ひらがなで書かれています。
それに慣れるまでに結構かかってしまった。
しかし、物語としては最初から最後まで切なくてたまらなかったんですけど、不思議な心地良さがありましたね。
とりあえず、弟君がまだ生存しているだろうことが、とにかく嬉しかったです。
切なくて、愛おしい、余韻の残る話でした。