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ボクハ・ココニ・イマス 消失刑

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実刑判決を受けた浅見克則は「懲役刑」と「消失刑」のどちらかを選べ、と言われる。消失刑だったら、ある程度の自由が与えられるらしい。いったい、どんな刑罰なのか?


梶尾真治さんの本です。
 
これも、書店で見かけて気になったタイトルだったので借りてみた中の一つです。
 
ああ・・・
悲し過ぎる。なんて悲しいんだろう。
 
普通の会社員だった浅見は、ひょんなことから知り合った女性・彩奈が原因で傷害事件を起こしてしまい、実刑判決を受けて服役している。
 
罪の意識が十分にあり、全うに服役をしている浅見に、
突然迫られた選択。
 
「懲役刑」と「消失刑」
 
「消失刑」を選べば、通常一年の刑期が8ヶ月に短縮される。
制約はあるものの、自宅で過ごす事も可能――
 
そんな言葉に「消失刑」を選択した浅見に待っていたのは、まるで透明人間のように、他人の目に映らない人間になるという生活だった。
 
はめられた首輪は、刑期を全うするまで外れる事はない。
人に近づくと自動的に首輪が締まることになり、無理に外そうとしたり、電話・メール・手紙・果ては声を発して誰かとコンタクトを取ろうとすると、首輪が即座に反応してそれをさせまいとするのだった。
 
町を歩けば、浅見の姿は誰にも見えないため、車に危うく轢かれそうになることもしばしば。
慣れるまでは何がタブーで、何処までの行動が許されるのかを模索する日々――
 
栄養の取れた食べ物は与えられ、寝る場所もある。
 
ホームレスに比べたら満足して良いと思える生活だったが、次第に誰からも存在を認められないという生活から孤独を感じ始める浅見。
それも8ヶ月の辛抱と耐え抜いていた浅見に、不幸が訪れる。
 
首輪のカウントダウンが壊れ、刑期が終わってもそれが外れる事はなかったのだ。
そして、勿論誰からも存在を見つけてもらえないという絶望的な状況だけが残る――
 
絶望に打ちひしがれていた時。
そして、ふいに心の中に呼び掛ける声に気づく。
菜都美という女性の声。
 
一体この女性は誰なのか?
 
孤独が生み出した幻聴なのか?
 
そう考えながらも、菜都美が実在する人間であることを知った浅見は、その陰に世間を騒がせている事件が関係していることを知り――


殺人を犯した訳でもなく、しかも女性に騙されて咄嗟に起こした障害事件がきっかけに、服役することになった浅見が選んだ「消失刑」。
 
これは・・・・辛い、辛すぎます。
 
透明人間みたいに、自由に行動できる訳でもなく(消失刑には制限が多い)・・・・
そして存在はしているのに、誰からもその姿を見つけてもらうことができないという孤独。
 
あまりにも悲劇的で悲しい結末に向かっている気がして、ハラハラして、切なくてたまりませんでした。
 
ラストは・・・・想像していた悲劇は訪れなかったものの、浅見に光はあるんだろうか?
そんな事を考えてしまうと、切なくてたまらない作品でした。