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赤いカンナではじまる

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その人は涙を流していた。涙を流していたのは、わたしと同じ書店員だった――。

ある日、書店員の野際は、文芸書棚を担当している保科史江が涙を流しているのを、出版社の営業マン、作本とともに目にする。後日、退職を願い出る彼女の涙の理由とは、何だったのか。関西出張で偶然彼女と出会った作本が、意外な秘密を聞き出してくる……。(「赤いカンナではじまる」)

期待の新鋭がおくる、書店員、編集者、出版社営業マンたちの「過去との再会」を描いた恋愛小説集。



はらだみずきさんの本です。
書店で見かけて気になったタイトルをメモしていたやつの一つでした。
 
何だか評判も良さそうな感じだったので、結構期待していた作品です。
 
表題作「赤いカンナではじまる」の他、
「風を切るボールの音」――疲れたサッカー雑誌編集者のもとへかかってきた電話の相手は……
「美しい丘」――北海道からやって来た若い書店員が、出版社営業マンに頼んだこととは。
「いちばん最初に好きになった花」――図鑑シリーズ「野の花」担当編集者の、切ない思い出が甦る。
「最後の夏休み」――大学生4年生、人生最後の夏休み。いったい自分は何をしたいのだろう。
の全5編の短編が収録されています。
本に関係する書店員や編集者など、共通の登場人物が出てきたりと、とても読みやすいです。
本好きにはたまらないですね。
 
表題作は何だかきちんと理解できないまま終わってしまった感じだったのですが、「美しい丘」と「いちばん最初に好きになった花」は、何だか鼻の奥がツンとしてしまうくらい、素敵で切ない話でした。
 
だけどどれも悲観的ではなく、前向きな締めくくりなので、読んでいてとても癒されました。
 
読みやすい文体と、きらりと光る作品たち。
 
はらだみずきさん、気になる作家さんがまた一人できました。
 
素敵な短編集です。