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それいゆ

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春、大学生になった南夕夏は演劇サークルに入った。入部した「劇団森の人」は、サディスティックな言動で“森の魔女”と怖れられる菊池あづみ、金にも女にも脇が甘い六年生の野原英里加、人格者のようで何を考えているかわからない阿久津昇と、難のある連中の巣窟だった。驚いたり呆れたりしながらも、ようやく部に馴染んだ頃、夕夏に思いがけない試練が課せられた!煌めく青春小説。


生田紗代さんの本です。
 
書店で見かけて、可愛い女の子の装丁とタイトルに惹かれて図書館で借りてみました。
全然知らない作家さんだったし、そんなに期待していなかったのですが・・・
なんでこんなに心ひかれたのかと思ったら、文藝賞受賞作家さんでした。
 
そして、思っていたよりとても良かったです!
 
なにより、主人公の女の子の地味さであるとか、考えであるとか、人の輪の中に入っていても一人でいる子の方が孤独ではないのではないか?といった考えなど、あまりにも自分を見ているようで感情移入してしまったというのがあるでしょう。
 
演劇を描く小説は、もう何度も読んできましたが、個性的な「劇団森の人」のキャラクターも素敵で、特にあづみと男の子なのに英里加という名前のこの二人の容赦ないやりとり(特にあづみの暴言が清々しいくらい!)が、読んでいる方はとても面白く、テンポの良い会話に思わずくすりと笑ってしまうくらいでした。
 
しかし、しみじみ思いましたけど、こういう風にただキツイだけの性格・・・・言い方はキツイけれど、その人の事をちゃんと理解した上での厳しい発言をするあづみみたいな人間には愛を感じますが、自分のところの主は全くそれとはタイプが違う、ただキツイだけの人間には、愛どころか悪を感じるなあと思いながら読み終えました。
 
一人の地味で目立たず、自分の意見を強く主張しないタイプ(ここは自分とは違うが)の女の子が、少しずつ変化していく様は、ありきたりの話かもしれないけれど、私にはとても好感をもてました。
 
文章も癖がなくとても読みやすいので、他の作品も読んでみようと思います!