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トイレのポツポツ

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会社は、あなたに誠実ですか。あなたは、仕事に誠実ですか。派遣社員が部長に命じられ、全部員に送信した1通のメール。すべてはそこから始まった…!?中堅食品会社の内実を描く連作小説。


原宏一さんの本です。
 
なんじゃこのタイトルは!と、図書館で見かけてつい借りてしまった本でした。
原さんの事も知りませんでしたし、勿論初めて読んだ作家さんです。
 
タイトルからして不可解だし、装丁もトイレの便器だし・・・なんか物凄くつまらなそうな気が・・・と思いつつ、手に取った本を書棚に戻せなかったのだから、多分何かの引力が働いたのだと思います。
 
 
結果・・・・
 
やばい。なんか働く事って何かを考えさせられたぞ?!
 
という感想を持ちました。結論から言ってしまえば、タイトルに反して?良かったです。とても!
しかも、不景気によって職を失った私は、会社に対する不信感を抱きつつ、働く事の意味を見失いかけていました。
だけど明日からは新しい会社で働く事になって、今までの慣れた環境から一変。
新しい世界に飛び込む不安がある中で、このタイミングでこの本を読めた事に感謝したいくらい。
 
 
転職活動で会社を訪問する時に、その会社の雰囲気を見るのに一番有効なのは、
トイレが清潔に保たれているか、という事を確認すること――というのをよく聞きますね。
 
まさに、トイレのポツポツ――男性が小便をするときに便器からはみ出た尿のポツポツ――から物語が始まりますが、
 
「会社が乱れてくると、トイレの汚れもひどくなるの」と掃除のおばちゃんが言った一言を教訓にし、社内の不正を暴き、正面からぶつかり、ダメな会社の再建を図る従業員たちの姿が、熱く胸に迫ってきました。
 
倉庫のフォークリフトの描写など、最初にいた会社の事を思い出しながら、
正しい事を正しいと主張したものが損をする――という会社組織というところに不信感を抱き、理不尽な気持ちにさせられましたが、ちゃんと前向きに終わる事にもほっとしました。
 
働く事は何か。
会社とは何なのか。
 
そんな事を改めて考えさせられた一冊でした。