あのとき始まったことのすべてを大切にしたい。中学の同級生との再会から、僕の中でふたたび何かが動きはじめた……。大ベストセラー『100回泣くこと』の著者が贈る、ノスタルジーとせつなさ迫るラブ・ストーリー。
中村航さんの、久々の作品が届きました!
最近は常々中村さんの作品の装丁を担当している、宮尾和孝さんとのコラボレーション的な本を出されたりしていたので、本格的な小説(しかも今回は珍しく結構分厚い!)は久しぶりかも。
良くも悪くもいつも同じような、中村節炸裂のまったりとした雰囲気の作品が多いですが、今回はなんか物凄くぐっときちゃいました。
多分、自分と主人公が大体同じ年代であるということもあるんだろうと思います。
中学を卒業して、早10年。
26歳になった私は、だけど中学の頃の事を今でも割と鮮やかに思い出す事ができるのです。
多分、この年齢を大分越えてしまった人や、まだこの年齢になっていない人には、「そんなに詳しく覚えている訳ないじゃん」なんていう目線で見られてもおかしくないと思うんですよ。
きっと私がその立場だったら、そう思っていたと思うんです。
だけど、覚えてるんですよねえ。
むしろ、底辺高校生だった頃より、中学の頃の思い出は思春期故に辛い事も嫌な事も沢山あったのに、キラキラした思い出の一つになっている。
そんな事を思い出しながら読めた本作は、やっぱりキラキラ輝いていたのでした。
(少々ネタバレあります)
ひょんなきっかけから、中学卒業から会っていなかった、当時仲が良かった女の子・石井さんと10年ぶりの再会を果たした岡田くん。
10年ぶりなのに、それを感じさせないくらいに息のあった二人は、会ったその日に自然と男女の関係を持った。
しかし、いずれは東京から大阪への転勤が決まる事がほぼ確実な状況で、決して遠距離恋愛はできないとお互いが好きなのにもかかわらず、付き合うという関係にならないまま、二人の関係は続いていく。
そして、久しぶりに連絡を取った柳と、意外な繋がりを持っていた白原さんと、中学時代に仲の良かったグループ4人で、11年ぶりの再会を果たす――
さすがに、10年ぶりに再会した人と恋仲になるなんていう事はありえなーい!って思ったんですけど、白原さんが、当時の事を詳細に覚えていること、それはあの頃仲間と過ごした時間がとてもとても大切なものだったからなのだなっていうのが伝わってきて、とにかくほっこりとした気分になったのでした。
10年ぶりに再会した人と体の関係から始まる恋愛ごっこ――なんてありふれた話じゃなくて、本当に良かったです。
そこはお得意の中村節でそんなちんけな話から早々と脱却してくれていて、そして岡田君だけの語りだけでなく、中学生当時の白原さんの語りの章があることで、物語はぐっと濃密で味わい深いものに仕上がっています。
個人的に、岡田君の先輩の門前さんの「おでんでんでんでんでんでんでん♪」だとか、ラストの章の門前さんの言葉が深くて、好きなキャラクターでした。
岡田君と石井さんの言葉の掛け合いもとても魅力的♪
好きな人のパーカーのフードには、何か入れたくなるらしいよ。
鹿が見たくて最近物凄く奈良に行きたいのですが、この本を読んで更に行きたくなりました。
素敵な作品でした。