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メグル

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「あなたはこれよ。断らないでね」奇妙な迫力を持つ大学学生部の女性職員から半ば強要され、仕方なく指定されたアルバイト先に足を運んだ大学生たち。そのアルバイトは、彼らに何をもたらすのか?五人の若者を通して描かれるのは、さまざまな感情を揺り動かす人間ドラマと小さな奇蹟の物語。小説の楽しみを存分に詰め込んだ愛すべき傑作、鮮やかに登場。


 
乾ルカさんの本です。
 
書店で見かけてタイトルが気になっていたので、図書館で予約してみました。
初めて読んだのですが・・・・凄い、この作家さん、これから注目したいです!
 
整った顔立ちだけれど、美人というよりは人形のようなという形容がしっくりくる女性事務員が在籍している大学学生部。
アルバイト情報を求めて出向いたそこで、何故か断るタイミングを逸してしまうように強引にアルバイトを紹介され、出向く事になった学生たち。
 
死人と手を繋ぎ、「引く手」という生きた人間をあの世に引っ張っていってしまうという曰くつきの現象が起こる事から守って欲しいというアルバイトをする事になった男の子。心霊的要素を含んだ――ヒカレル
 
突然の病が父を襲い、体も言葉も不自由になった父親を襲った苛立ち。その苛立ちを一心に受け、身も心もぼろぼろになった母。両親のそんな姿を見たくないと家から遠ざかる口実を探していた女の子が求めたアルバイトは、父が入院していた病院の生協のアルバイトだった。家族とは何かを考えさせられた――モドル
 
一日たった一回、犬の餌やりだけで一万円が支給されるという割の良いアルバイトを見つけ、女性事務員に「辞めた方が良い」と言われるのを振り切り、男の子が向かった先で見たものは・・・・一体これは何の肉なのか?そしているはずの老婆の姿がないことに関係しているのか?ミステリ要素の強い――アタエル
 
過去のトラウマから、物を食べるという事に執着しなくなった男の子。全くやる気のなかったアルバイトを強引に勧められたその内容は「食事」奇妙な依頼のその真相とは・・・?美味しく食べる事の本当の意味に気づかされた――タベル
 
毎年やってくる仕事の依頼。仕事場所は、自分が住んでいる家。巡り巡る季節と、永遠に時が止まったままの依頼主との関係の先には。女性事務員悠木の知る事実。ミステリアスな雰囲気なのに、何故かほっとする温かさのある表題作――メグル


 
初めて乾さんの作品を読んだので、乾さんがどういう作風の方なのかはまだ理解できていないのですが、「モドル」が一番良かったかな。
 
けど、想像したらぞっとする「アタエル」も自分は結構好きだったり。
これは何となく予想がついたんだけど、冷静に考えてみると何だか怖い。
 
とても読みやすい文章と、何か大きな病気を抱えていたらしい過去を持つ不思議な女性・悠木の、人に向いている職業を的確に割り振れるその不思議な力。
 
5編の若者たちの多種多様な物語。
 
読み応えもあり、良い本に出会えたと思いました。