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製鉄天使

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辺境の地、東海道を西へ西へ、山を分け入った先の寂しい土地、鳥取県赤珠村。その地に根を下ろす製鉄会社の長女として生まれた赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操るという不思議な能力を持っていた。荒ぶる魂に突き動かされるように、彼女はやがてレディース〈製鉄天使〉の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す──あたしら爆走女愚連隊は、走ることでしか命の花、燃やせねぇ! 中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。里程標的傑作『赤朽葉家の伝説』から三年、遂に全貌を現した仰天の快作!




桜庭一樹さんの本です。

いやぁ!面白かった。なのに、何だか泣けた。

赤朽葉家の伝説の中で、強烈な印象を残した「赤緑豆小豆」のスピンオフ小説。


私が生まれる前、まだ学校が校内暴力に溢れていた頃。

とある鳥取県の村の名家――「赤緑豆家の馬鹿お嬢」と有名な小豆は、子供ながらに彫の深い綺麗な顔立ちをした、まだションベン臭い生意気なメスガキだった。

そんな小豆が、鳥取を支配しているドブス集団「エドワード族」の領地にうっかりと足を踏み入れてしまったことから、中学入学早々にして目をつけられることになる。

屈辱の敗戦から、族のマスコットのかわゆいスミレ、特攻隊長の花火、親衛隊長のハイウェイダンサーの4人で結成された「製鉄天使(アイアンエンジェル)」。

小さな族だった製鉄天使が、中国地方の全統一を成し遂げるまでの破天荒で青春炸裂の物語。




ありえない!

そうなんです。ありえないことだらけなんだけど、だけどなんだろう。面白い!

そして、子供から大人の階段を登っていくまでの永遠のようで短かい数年間を、喧嘩上等と勇ましく駆け抜けた小豆の、硬派一徹な姿勢がとても格好良く、爽快です。

「頭脳派」でかわゆいスミレの無垢だった中学時代から、族を抜けて真面目な進学校に通い始め、小豆と離れてから転落していく様、そして永遠の別れも、「赤朽派家の伝説」で触れられていたものより、更に深く深く丁寧に描かれていて、目頭が熱くなってしまいました。

割とページ数もあったのだけど、あまりにも面白くてページをめくる手が進む進む!


現代の不良や悪が置いてきてしまったであろう、「突っ張ってても、心はすたれてない」という感じの小豆の不良っぷりは、何だかどうしようもないんだけど、微笑ましいです。

頭が良い人、善良に見える人、「普通」に見える穏やかな人が、平気で人を殺したり物騒な事件を起こす時代です。
昔、校内暴力で世間を騒がせていた不良たちは、案外今では普通に暮らしているんじゃないでしょうか。

そう考えると小豆が駆け抜けた青春時代は、やっぱり永遠に遠いものになってしまったのかもしれません。