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あるキング

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弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈ファンの両親を持つ山田王求。入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。王求の才能が飛び抜けていると知った両親は、異常ともいえる情熱を注ぐ…。




伊坂幸太郎さんの本です。
予約するのが遅くて、ようやく手元にやってきました。長かった・・・。

うーん・・・何だろう、この読後感は。
すっきりしないような、もやもやとしたこの不思議な感覚・・・。

あとがきを読んで、少し納得しました。
いつもの伊坂さんの小説と、雰囲気が異なるものになった――と。

そうか、この違和感はそのせいかもしれない。


伊坂さんはぜひ一度は読んで欲しいとお薦めする作家さんではあるけれど、初めて読む作品にこの作品を読んで欲しくないと思ってしまった。

この程度か、とか思われたら・・・何だか癪。

そう、多分昔からの伊坂さんファンには納得がいかない一冊でもあるのではないだろうか・・・。

私でさえ、途中からファンになった分際で言ってしまうけれど・・・この本、一回読んだらもういいかな、っていう作品に思えました。

現実と虚構が行き来して(いや、それは虚構ではないのかもしれないけど)、そして伊坂さん独特の台詞回しが、いつもなら軽快でくすりと笑ってしまうはずのそれが・・・何故か今作では生きていない気がしてしまいました。
何でだろう?

両親に愛され、野球をするという事に目覚め、野球をするために生まれてきたかのような王求。
最後まで彼の自我が表に出てこなかったような、最初から最後まで彼の話であるはずなのに、何故か本人は目立っていないような、薄ぼんやりとした印象しか受けなかったからなのか・・・。

結局、何が言いたかったんだい?

と私は思ってしまいました。




伊坂さんはだけど、自分の希望とは裏腹にどんどん名が売れて、本も売れて、原作がほとんど映画化されて、伊坂幸太郎の名前が独り歩きしていく事から、敢えて挑発的に逆行しようとしているようにも思える。

だとしたら、いつかふっと凄い作品を書いてくれるような気もする。

だから読むのをやめられないのだろう。